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target3-11.媚薬

風紀委員会の仕事をこなして数日経った頃だった。 放課後、腕章を付けた颯都が見回りをしていると後方に複数の気配を感じる。 「(にしても…ワンパターンだな)」 先日の新聞記事が出てからは比較的落ち着いた生活を送れていたものの、懲りもせず同じ手でくるとは。 舐めているのか?と颯都は思う。 何度来たとしても、何を仕掛けて来たとしても…結果は同じだが。 適当に空いている教室に入り、追い掛けて来た相手らを正面から出迎える。 その中には、前襲撃して打ちのめされた相手もいた。 「この前は、世話になったなァ。委員長」 「お前らも暇だよな…他にも遣る事有るだろ」 呆れて皮肉を返すと、男達は下卑た笑いをするだけだった。 その間、正面にいた数人が一瞬で背後に移動し、反応し切れなかった颯都の腕を拘束した。 抜け出そうともがくと骨が軋むくらいの力を入れられ、痛みに颯都の顔が歪む。 しかし幾ら抵抗を続けても、拘束の力が強まり抜け出す事が出来ない。 背後を取られるなんて迂闊だった。 しかし…可笑しい。 前とは明らかに、動きが変わっている。 数日でこんなに変化する訳がない。 目の前の男を睨み見て抜け出そうと足掻く颯都に、この前の脱色した髪の男が近付き、ごく近い距離で顎を掬う。 「この前の倍にして返してやるからよぉ…しっかり身体で払えよ」 男がおい、と颯都の後方にいる男達に促し、抵抗出来ないようにガッチリと抑えた。 そしてポケットから怪しげな色の液体小瓶を取り出し、顔を背けて唇を噛む颯都の口を指でこじ開けその液体を流し込んだ。 飲まないようにと堪えるも、顎を強引に持ち上げられて飲んでしまい、奇妙な液体が喉を嚥下する。 「ッ…何を飲ませた…?」 何故だか飲んでから、身体の奥がジンと熱くなる感覚がして眉をしかめる。 「すぐに気持ちよくなれる薬。 まずは美味しそうな血からいただこうかなぁ…。 それからグチャグチャに突いて、厭らしくなった委員長を回してやるからさぁ…」 颯都の耳許で囁き、耳の穴を舌でなぞる。 一気に生理的嫌悪が背筋から這い上がったと同時に、拘束していた男達が倒れた音がする。 顔だけ振り返ると、高圧電流が流れたように焦げて気を失っていた。 どうやら無意識に能力を使っていたらしい。 前の男が驚いている隙に、颯都は思い切り拳を振り上げて殴り、続けて鳩尾を殴り飛ばした。 「…二度と俺に近付くな」 苦しげに喘ぐ男に吐き捨てると、熱を帯びて来た身体を動かして教室を出た。 …熱い。 何もしていないのに歩いているだけで息が上がり、内側から湧き上がってくる熱に冒される。 フラつく身体で周りの眼を気にする余裕などなく、颯都は廊下を歩いて行った。 兎に角身体の熱を冷まそうと、立ち寄ったのは保健室。 ドアを開け、煙草を吹かしている保険医に目もくれずにベッドへと足を運ぶ。 「借りる」 「……待て。んなフラフラしてんなら…」 颯都の肩を掴み自分の方を向かせた保険医の言葉が止まる。 普段は白い肌は熱を堪えながらも赤く色付き、扇状的な颯都の表情を引き立たせていた。肩に手を置かれてピクリと身体が跳ね、片手で振り払う。 そのままベッドに行こうとする颯都の手を掴み、自分の元へ引き寄せ手のひらを額に置く。 火照った体温には冷たく感じる体温に身体が震えた。 「38度はあるな…辛いか?」 「…別に」 悟られないように颯都は顔をずらすと、額に当てられた手が滑り落ちる。 保険医は颯都の腕を掴むと抵抗する颯都を引きずってベッドに放って押し倒した。 蹴ろうとすると脚で封じられ、顔を殴ろうとする手を縫い止められた。 奇妙な熱の所為で身体能力が下がっている。 霞みそうな意識を繋ぎ止め、紫の隻眼を睨み付ける。 「…ッ何のつもりだよ」 「じっとしてろ」 「嫌だ離れろ」 「保険医の俺が直々に治療してやると言っているんだ。 素直に好意を受け取ったらどうだ」 「頼んでねぇだろ!…止め…ッ」 颯都のワイシャツのボタンを1、2個外し、鎖骨を舐め下半身へと手を伸ばしてくる。 その手から逃れようと颯都は身を捩る。 その時、保健室のドアが開き二人のベッドに足音が近付いてカーテンが引かれた。 燃えるような赤い髪が目に付いて驚く。 「榊。ソイツは俺のだ。返せ」 「見ての通り治療中だ…催淫剤飲まされてる」 「此の何処が治療なんだよ…ふざけんな…ッ」 組み敷かれ腕を拘束されたままの颯都が息切れしながら抗議の声を上げる。 「効能が切れるまで射精(だ)させれば一番効率良く済むだろう」 「其の発想の時点で、有り得ねぇんだよ…!」 言い争いが止まらない二人を璃空が力ずくで引き剥がし、颯都を肩に掛けるように担いだ。 手持ち無沙汰になった保険医はやれやれ、と言うように煙草をくわえてライターで火を付けた。 「…離せッ!」 力の入らない身体で抵抗するも虚しく、璃空に担がれて連れ去られた。 (離せって言ってんだろッ!) (良いぜ。ここで犯してもいいならな) (…ッ!!)

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