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第254話
「ぷは……じゅんと、さ……?」
「ん?あぁ……」
キスもそこそこに動かなくなった俺に焦れたのか、キスが好きだからか、玲音が珍しくすり寄ってきた。
だから仕方なく口に――ではなく、頬にキスを落とし耳に口を合わせる。
「えぁっ?ぁ、ぇ……?」
来ると構えた場所ではないそれに焦ったような、困ったような表情は見えたが抵抗や暴れる様子はなく……と言うより、急な行動について来れないってところだろう。
玲音は急なことが起きると大体こうなる。俺がどう出るか待っているのかと思っていたが、軽くパニックを起こしていたのだと、この間の亜睦の件で理解した。
「落ち着け。性欲と食欲、どっちが勝るか考えてただけだ」
「ふっ、ぇ?」
「今はここで止めとく。カツサンドとカレーがそろそろ来る」
「え……っぁぁ……!」
奥まで嵌めていた指を一旦引き抜き、ティッシュで拭いお互いの身嗜みを整える。
すると見計らったように玄関のチャイムが鳴った。
「ぁ……」
「ちゃんと、カレーも頼んであるんだぜ?」
なにか言いたそうにしていたが宣言した通り、どっちの欲が勝るのか見たいから俺からは何も言わず、しかし隣からも移動はしない。
最後まで食ってから来るか、途中で言って来るか。
それともマジで、食欲が満たされて終わりになるのか。
最後の奴だったら胸倉掴んでベッドに投げ飛ばす。
つーか、カレーってなんでこんなうまい匂いしてんだよ。途中で来られても食うのやめられねえな。
そしたら玲音、どうなっかなあ?
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