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こんなに近くにいるのに
【創side】
「…ん、けぇ?」
今何時だろう、カーテンの隙間から見える明るさが朝なのを伝えているけれど、正確な時間はわからない。
枕元に置いているはずのスマホに手を伸ばそうとしたら、その手が動かないのに気付いた。
ぎゅっとおれを抱きしめて眠る継。可愛い。かっこいい。愛しくて泣きそう。
大好きな継が、無意識のうちにもおれを離さずにいてくれる。ほぼ毎日この状態で目が覚めるけど、毎回嬉しくてたまらない。
でも、こんなに近くにいるのに、もっともっと近くに行きたい。
継の腕の中でそんな事を考えながら、心地よく刻む鼓動に耳を澄ませた。
柔らかなほっぺたをツンツンと指先で触れて、そのまま手のひらで包み込む。ふわりと笑った気がした。
額に掛かる前髪を払って、再び頬に手のひらを充てがう。相変わらずくうくうと気持ち良さそうに寝てる。可愛いなあ。
そんな事を思いながら頬を撫でていると、ふいにその手を取られた。
「…そぉ?」
「うん。おはよ」
「んぅー……」
ちゅ、と指先にキスしてくれた。寝起きだからか少し掠れた声でおれを呼ぶ。
「創…おはよ」
「おはよ、継」
「腰痛くねぇ?」
「ちょっとね」
腰のあたりをそっと撫でてくれる手のひらが暖かくて気持ちいい。
継はいつだっておれを一番に考えてくれる。それが嬉しくて、すごい幸せ。
「悪い、ちょっと我慢できなかった」
「ううん、それはおれも同じだよ」
それより、と最後に付け足して、相変わらず指先に触れるそこをちょん、と突ついてみた。
「してくれないの?」
「………くそっ、可愛すぎだろ」
こんなに近くにいるのに、抱きしめ合ってキスをするだけじゃ物足りないんだ。
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