344 / 507
【番外編】はじめてのおつかい
「けえ、うしさんのおにく!」
「ちがうぞ、にあとりだぞ!」
継くん、ニワトリって言えなくてニアトリになってます。
二人でカゴの持ち手を一本ずつ持って、にあとりのお肉を入れました。
これでお買い物は完了。レジでお金を払います。
「二人で来たの?」
「うん!」
「オレとそおだけっ!」
レジのお姉さん、袋を二つに分けてくれました。
お兄ちゃんの創くんは卵、弟の継くんは牛乳と鶏肉。継くんの方がちょっとだけ力持ちなんです。
ご機嫌な二人は、お姉さんに手を振って歩き出します。もうお姉さんはメロメロです。
「けえ、くるま!」
「うわあ、あぶなーい!」
「ほら、こっちおいで?」
さっきと同じやり取りです。創くんは、お母さんが二人を車道側にならないようにしてるの、ちゃんと知ってるんです。
小さな腕にビニール袋を下げて、二人はぎゅっと手を繋いで歩きます。どこに行くにも、こうして手を繋いでるんです。
一歩ずつ足を前に出して、大人の足で3分ほどの距離を、二人は仲良く並んで歩きました。知らないお姉さんに手を振るのは継くん。物怖じしない子なんです。
「けえ、ふたりでおかいもの、たのしいね!」
「そおがいるといっぱいたのしい!」
にこにこしながら歩いてるうちに、やっと帰ってきました。玄関の前にはお母さん。
「あっ、おかあさーん!」
「からあげー!」
お母さんのもとに駆け寄ると、誇らしげにビニール袋を掲げてみせます。ほんと嬉しそう!
そんな二人にキュンキュンしちゃうお母さん。親バカなんです。でも世間の親はみんな親バカです。自分の子供が大好きです。それがこんな可愛い双子ちゃんならなおさらです。
「おかえりーっ!ありがとうね、二人とも!」
「ちゃんとね、けえとてぇつないだの!」
「カゴ!ふたりでもった!」
「「ふたりでできた!」」
ぎゅううっと小さな二人がお互いを抱きしめて、それをさらにお母さんが抱きしめます。あれ、お母さんちょっと涙目。
「二人とも偉かったねぇ。さ、おやつ食べな!」
「やったー!」
「けえ、てぇあらってからだよ!」
さすがお兄ちゃん、しっかりしてます。
洗面所で仲良く並んで手を洗い、お母さんが用意してくれていたおやつを食べます。お揃いのコップには、継くんが頑張って持ってくれた牛乳を入れてくれました。
ソファに座る楽しそうな二人の声を聞きながら、お母さんはプリンとから揚げの下拵えです。
しばらくすると、二人の声が聞こえなくなりました。お母さん、キッチンからそちらに目を向けて笑ってます。
「ほんと、二人とも可愛いんだから」
いつの間にか、二人とも眠ってしまったようです。ソファに凭れて、お互いの肩と頭をくっつけて支え合ってます。
小さな手のひらは、相変わらずぎゅうっと繋がれていました。
終わり
ともだちにシェアしよう!

