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午前二時のコール
いつもより大きなベッドでごろごろと右から左へ転がりながら、寝心地の良い姿勢を探る。でも、そんなの見つかるわけない。
継の体温が感じられない。それだけで眠れないだなんて、今まで考えた事もなかった。
はあ、とため息を零してスマホを手に取り時間を確認すると、とっくに日付けが変わった真夜中。
継の声、聞きたいな…
でも、こんな時間に電話なんかしたら、他のみんなに迷惑だろうし…
そう思い、とりあえずメッセージだけ送ってみた。
「継がいないとベッドが広く感じるよ」
送信した瞬間に既読マークがついて、あ、と思った時には電話が掛かってきた。
え、うそ、どうしよう…嬉しいけど、いいのかな?
ちょっとドキドキしながら通話ボタンを押して、そっと耳に充てた。
「…継?」
『創…悪い、どうしても声聞きたくてさ。なんか寝れねえし…』
「ううん、大丈夫。おれも同じ…」
継も寝れなかったんだ…昼間動いて疲れてるはずなのに。
いつもなら継の声と鼓動が耳元に伝わる。けど、今は違うのが寂しい。
『創…大丈夫か?……泣いて、ない、か?』
心配そうな継の声。なんだか、継の方が泣きそうだよ。
大丈夫、だっておれ、お兄ちゃんだもんね。
「うん、継こそ、おれがいなくて泣いちゃうんじゃない?」
『…ん、寂しい』
継が素直に気持ちを吐露してくれるから、今すぐ抱きしめてあげたくなる。
「継…明日行ったら、ぎゅってしてあげるから、泣かないで寝れる?」
『ちゅーも』
「ふふ、わかった」
可愛いなあ、ほんと。ついさっきまで寂しかったのが、たちまち胸が暖かくなってきゅんとする。
かっこいい継も可愛い継も、どっちもおれの継。大好きだなあ。
「継、ほらもう寝なきゃ」
『ん…創も寝る?』
「うん、一緒におやすみしようか」
すう、と息を吸い込む。電話の向こうでも、継が同じ事をしてるのがわかった。
ぎゅっとスマホを握りしめて、一拍置いて言葉にした。
「おやすみ、継」
『おやすみ、創』
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