40 / 507
心が狭いと言われても
【継side】
「ねえ、だめ?」
つい、と小首を傾げながら、握った手の人差し指を唇に充て、上目遣いで見上げてきて、仕上げに反対の手はオレの制服の袖をきゅっと引っ張る。
なんだこれ、拷問か。
襲っていいの?学校帰りの往来だけど襲っていいって事ですか?
「ね、継、お願い…?」
切なげな顔で言われた。マジやばいです、オレの下半身。
・
・
・
・
・
「うわぁ、可愛いーっ!」
扉を開けると、そこにはもふもふとした犬、いぬ、イヌ!
学校の帰り、新しくオープンしたという犬カフェのチラシをもらってしまった。
創が目をキラキラさせながらそのチラシを見て、可愛くおねだりしてくんだぞ、断れるか!
「あはっ、ふわふわ〜!」
ああ、来てよかった。母さん、天使がいるよー!
オレはいつも鞄に入れてあるデジカメを連写モードにして、笑顔の創を撮りまくった。
創は何故か動物に好かれるみたいで、何もしなくてもむこうから寄ってくる。
いつの間にか創は何匹もの犬に囲まれていた。
「わ、くすぐったいって!」
犬達が走り回っても滑らないようにと敷かれたカーペットにごろんと横になり、そこに小型犬がわんさか群がってる。
脚にじゃれたり、腹の上に飛び乗ったりと、自由奔放な犬達。
「あはは、もう、わかったから!」
顔や指先を、犬達がぺろぺろと舐め回してる。
うん、可愛い。
スマホの画面これにしよ。
なんて思いながら、ひたすらシャッターを押した。
「んっ、ちょ、もう…」
困ったように笑いながらも、犬達の好きなようにさせてる創から、甘い声が聞こえてきた。
相変わらず可愛く啼くなあ。
って!
ちょい待て待て待て。
「ぁ、や、もう…やめてって、ン」
ぺいっと犬を引き剥がして、創を抱き起こす。
ほんのりほっぺたが染まって、目が潤んでて。
はあっ、と息を吐きながらオレを見上げてきた。
「…創、帰るぞ」
「あ、え?うん?」
ともだちにシェアしよう!