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あめあめふれふれ

【継side】 「きりーつ、れーぇ」 気の抜けた号令とともに、ガタガタと椅子や机を動かす音と、ざわめくクラスメイトの声。 放課後に臨時で職員会議があるため、今日は全ての部活動が休みとなる。突然できた時間をどう過ごすかで盛り上がりながら、皆帰り始めた。 「継、帰ろ?」 「おう、今行く」 鞄を持って首を傾げてオレを見る創。相変わらず可愛い。なんつーか、散歩の途中で飼い主がコンビニ入るから入り口に繋がれて大人しく座って待ってて、ガラスに飼い主が映って見えて「もう帰る?帰ろ?」ってじっと眺めてるトイプードルみたい。もうさ、やめて。可愛すぎて辛い。 そんな気持ちを悟られないようにオレも鞄を持って創の隣に並ぶと、創の可愛い顔が苦笑いしてた。 「継…」 「ん?」 「えーと、ごめん、全部声に出てたよ」 「……………」 「…帰ろっか」 「……ん。創、愛してる」 「ふふ、知ってる」 階段を降りて下駄箱で靴を履き替えると、後ろから大介が寄ってきた。 「よっ。どっか寄「寄らねえ。二人で帰るからお前も帰れ」…ひでえな」 「あはは、ごめんね大ちゃん」 「まー別に慣れてんけどさ」 これあげる、と創が鞄から取り出したのは、最近お気に入りらしいプリン味のチョコ。あれ食ったあと創にちゅーすると、すっげえ甘い匂いがする。 ん、そーいやなんか雨の匂い。 「げ、降ってきた!」 「あ、ほんとだね。大ちゃん傘は?」 「こいつが持ってるわけねえって」 傘立てから二本の傘を取り出した創。朝の天気予報を見た創が持って行くと言って用意しといてくれた。 そのうちの一本を大介に手渡して、たたたっとオレの元へ寄ってくる。 「傘、大ちゃんに貸してあげるね?」 「はー、しょうがねーな」 「サンキュー創!んじゃお先ー」 空気を読んだらしい大介が、ひらひらと手を振って歩き出した。よし、伊達にオレ達の幼馴染みやってねーな。 じゃあオレは創とラブラブ相合傘しよっかな。 「…継、声に出てるから」 「あー……うん、帰るか」 傘を広げほら、と腕を出して創を呼ぶ。すぐに嬉しそうな顔をしてその中に入って来てくれた。 わかってんのか?嬉しいのはオレなんだけど。 「もっとこっち来いって。濡れんだろ?」 「ん…ね、ぎゅってして?」 「ったく、しょうがねーな」 しょうがねーのはオレの方。 だってほら、いつもより歩くスピードが遅くなってる。 傘の影に隠れて触れた創の唇は、甘い匂いがした。

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