83 / 507
かっこいいと思ってほしくて
【ジャスティンside】
球技大会?というイベントが近いらしく、朝のホームルームで誰がどの競技に出るのか決めた。
当然のようにバスケ部はバスケに、サッカー部はサッカーに出て、今は残りを決めている。
「ロー君は何が得意?」
突然話題を振られて驚いた。まさかオレが出るのか?
そんな事を思っていたのが顔に出ていたのか、前に立つクラス委員が笑いながら言う。
「ロー君もこのクラスだからね、もちろん参加してもらいます」
「あ、ジャスティンはバスケな」
オレの代わりにケイが答える。すぐにもう一人のクラス委員が黒板にチョークでオレの名前を書いた。
「んじゃ、これで決定な。次の時間は体育だし、ホームルームの残り時間も体育館使っていいぞー」
担任のその一言でクラスが湧き立ち、着替えのためロッカールームへ移動する。
ダイスケがちらちらとこちらを見ていたので、なんだかそれだけでも嬉しい。
「ジャスティン、バスケ得意なのか?」
「ああ、今はバスケ部のキャプテンしてる」
「マジか??」
驚いたダイスケが、着替えの手を止めこっちに振り向く。
そんな事が可愛いとか思ってしまった。
体育館へ移動して、思い思いにボール回す。まさか日本に来てからもバスケをするとは思っていなかった。
適当にストレッチをして体を解していると、突然ケイがボールを投げてきた。くい、と顎でゴールを示すので、二度三度ボールを床について、ひゅっと息を吸い込む。膝を曲げてから伸び上がり、一番高いところから放物線を描くように放ったボールは、オレのイメージ通りにネットへ吸い込まれていった。
ちらりとケイの隣にいるダイスケを見る。てゆーか、今の見てくれたのか?オレ、今のけっこう自信あったんだけど。
ダンダンと音を立てながら転がっていくボールを拾って、二人の元へと駆け寄ると、ケイが右手を上げている。ぱちんと手のひらを合わせると、ニッと笑った。
「ははっ、相変わらずフォームめちゃくちゃキレイだな!」
「ああ、これだけはケイにだって負けない」
フリースロー苦手なんだよなー、と呟いたダイスケが、さっきまでオレの立っていた場所へ移動する。
両手で持ったボールを投げる。が、ガツンという衝撃音が聞こえた。
「ダイスケ、もう一回やってみて?」
「え?おう…」
ダイスケの横に立ち、もう一度ボールを投げる様子を見る。ああ、やっぱり。
オレは持っていたボールをダイスケに手渡して、背中から腕を回した。
「肘がブレてる。しっかり脇を締めて」
「ん、こう、か?」
「ああ、指先まで意識して」
細い割に程よく筋肉のついたダイスケの腕を取りながら、同じ目線になるように顔のすぐ横からゴールを見つめる。
ダイスケの指に手を添えるように重ねて、そのままボールを宙に放った。
先ほどと同じ軌跡を描いたそれは、パスッと気持ちの良い音を出す。
「ほら、な?」
「え、あ、ああ、あ、ぁの…ぼっ、ボールっ!取ってくるっ!」
するりと腕の中から抜け出したダイスケは、一人ばたばたと走り去っていった。あ、何もないのに躓いてるし。
可愛いなあなんて思いながらその様子を見ていたら、いつの間にか隣にケイが立っていた。
「お前、ワザとやってんだろ」
「さあ、何がだ?」
「とぼけんな、オレも創にその手使うし」
ばれてたか。
当の本人はボールを拾うと壁際で見ていたソウの所まで駆け寄り、タオルを受け取っている。
その頬が少し赤いのは、走ったせいじゃないからだと思いたい。
ともだちにシェアしよう!