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ベタ惚れ
身支度を整えて靴を履く。双子はなんだかネクタイ直したりなんかしてるから、先に家を出た。もしもちょっとタイミングがずれてダイスケに会えないなんて事があったら、今日一日を無駄にしかねない。
少し歩くと、愛しい背中が見えた。途端に胸が熱くなって、気付いた時には走り出していた。
「ダイスケっ!」
「うわっ?」
「グッモーニン!」
勢い付いたままの振りをして、背中から抱きついてみた。振りほどかれたらどうしようとか、そんな後ろ向きな事は考えない。何事もポジティブシンキングがベストだ。
柔らかな頬に朝の挨拶をしてはっと気付いた。ああ、日本ではこれが挨拶とは言わないんだったな。知らなかった事にしよう。
「お、まえ…ここは日本だっつーの!」
「ああ、sorry」
「っとに…」
あれ、なんか反応が薄い。もっと嫌がられるかと思った。
オレがつい口に出してしまう英語に対して、それほどの抵抗もない。きっとこの先の将来を見据え、自分でも勉強しているんだろう。まあ、オレにとっては好都合だけど。
「昨日はありがとう、大事にするよ」
「…おう、しろ」
名残惜しくも隣に並び、歩調を合わせて歩き出す。
改めて昨日の礼を告げて微笑んでみせると、気のせいかダイスケの顔に赤みがさした。
ああ、可愛いな。愛しいっていう日本語、好きだな。
「…I love you」
つい言ってしまった気持ち。言葉にしたら、なんだか心が晴れていくようだ。
「…おう、え、いや待ておい」
Shit…流されてはくれないか。でもここで流されてしまうような人間ではないんだろうな、ダイスケは。
「Let's go to school!」
「ちょ、おい肩組むな離せこら!」
焦ったようにバタつく肩を抱き寄せて、可能な限り近付いた。
ああ、昨日よりもさっきよりも、心臓がバクバクしてる。
こんなにも好きになってしまったんだな…
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