103 / 507
最後の一つは
「あっ、大ちゃんおはよー!」
「うーっす。なんだよ、もしかしてジャスティン先に行ったのって…」
なるほどな、といった顔で頷くケイの横をすり抜けて、今買った袋からコーヒーを取り出してダイスケに渡した。
さんきゅ、そう言って素直に受け取ってくれるのが嬉しくて、心臓がキュッとなった。なんて単純なんだオレは。
「しかし、日本のチョコレートは面白いな。コーヒーゼリーのチョコレートなんて、もはや謎でしかないぞ」
「え?あ、マジでなんだこれ、どっちだよ」
物珍しさからつい手に取った一口サイズのチョコレート。コーヒーゼリーなのにチョコレートとは、日本人のセンスはどうなんだろう。
他にもソウが好きそうなプリンのチョコレートもあったので買ってみた。うん、これはまあ味の想像がつくな。
「創、これ美味い?」
「うん、今のお気に入りだよ」
あーんとツバメのように口を開けているソウ。こちらを伺っているダイスケに目で合図すると、一つ口に放り込んでやっていた。
まさかダイスケとアイコンタクトが取れるなんて、今日の占い結果は見なくても分かる。
「えへへ、ありがと」
「別に…買ったの俺じゃないし。あ、これ一個しかないのか」
カサカサと包みを開けたのは例の謎なチョコレート。半分くらい囓ってもぐもぐしてる。可愛い。撫でたい。
しばらくすると、それがオレの口元に差し出された。
「…ほら」
「………………………え?」
「い、一個しか無いし、その、ほら、あー…」
こういうのを日本語で何と言うんだろうか、迷う?うろうろしてる?ばたばたしてる?ああ、確かキョドウフシンだったか。
チョコレートを持った手がふらふらと彷徨っていた。それを掴んで引き寄せ、ぱくりと指ごと食い付く。
「!?」
「ん、甘いな…」
溶けて指先に付いたチョコレートを舐め取ってやると、ばっと手を振りほどかれてしまった。
みるみるうちにダイスケの顔が真っ赤になる。少しはオレの事を意識してくれたらしい。
「こっの……ヘンタイがっ!」
駆け出すダイスケの耳までも真っ赤に染まっていた。
…でも、ヘンタイって何だ?メタモルフォーゼ?
「あいつ、オレよりひでーな」
「大ちゃんも大変だねぇ」
ともだちにシェアしよう!

