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愛言葉
【創side】
継が耳元で囁く言葉は、とても甘くて、とても熱くて。
いつも、おれの心を狂わせる。
「なんか創、いつもよりイイ匂いする…」
夕飯の後片付けが済んで、ソファでダンベルを上げ下げしてる継の隣に座る。お気に入りのマグカップでココアをふーふーしてたら、継がこちらを振り向いてそう言った。
床にダンベルを置くと、後ろから腕を回してきて抱きしめてくれた。そのまま首筋にキスを落として、なんかスンスンしてる。
「わっ、ちょっと継!」
「んー…いい匂い。でも、コレじゃない気がする」
擽ったいし恥ずかしい!そんな匂いなんか嗅がないでよ!
ココアが零れちゃいそうなマグカップをテーブルの上に置いて、継の方を向き直してパッと両掌を広げて見せた。
「ハンドクリーム。さっき選んでたでしょ?」
学校の帰りに寄ってきたスーパーの隣にあるドラッグストア。この頃寒くなってきたせいか、ちょっと手がカサカサし始めたから、ハンドクリームが欲しかったんだ。
いろんな種類があって、選ぶのに時間かかっちゃったんだよね。継はあんまりこの売り場の匂いが好きじゃないみたいで、お店の中をふらふらしてたけど。
夕飯の後片付けをしてからさっそく塗ってみたんだけど、思ったより香りが良くて、ちょっと嬉しいんだよね。
「ああ、それでか。甘くて美味そう…」
手首を掴まれて、指先にちゅっとキスしてくれるその姿は、まるで絵本に出て来る王子様みたいで。
ぽーっと見惚れていたら、不意にそれを引かれて抱きしめられた。
「すっげぇ美味そう、食っちゃいたい」
「ッ、け、え…」
耳元に響く継の少し低い声と熱い吐息に、頷く事しかできなかった。
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