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残されたのは進路のみ

【大介side】 ホームルームは、進路希望調査だった。ついに来た。 前々から考えてはいたんだ。でも漠然としてて、身近にそんな人いないし、特に誰かに相談したりもしなかった。 けど、こいつが来てから自分の将来に向き合う気になってきた。 「なんだ、白紙じゃないか」 「わっ、ちょ、お前なに勝手に…!」 後ろから覗き込んできたジャスティンが、俺の白紙のままの進路調査票に何か書いてる。 【希望する職業:ロー・ジャスティンせんぞくsports trainer】 いやいや、勝手に決め過ぎだろ。てゆーか平仮名とか、変なとこで日本語できないよなこいつ。 いつも通ってる整形外科には、スポーツ外来なんてのがある。そこで出会ったのが始まり。 医者とは違う、プレイヤーとも違う。でも両方の知識と経験を活かせる職種だと思って興味がわいた。独学でテーピングしたりがむしゃらなトレーニングをするより、理論に基づいて行えば効果も倍増するとその病院の先生に聞いて、担当してくれてるトレーナーの人にも色々と聞いてみたりもした。 プロになりたいわけではない。あくまでも趣味とか部活の中で楽しんでる。 そこにジャスティンが教えてくれたトレーニング方法。強豪校ともなると、きっと学校に顧問とは別にトレーナーがいるんだろう。最初は死ぬかと思ったけど、冷静になって考えてみれば、実によく出来てるプログラムだと思う。動かす筋肉を意識して行えば、もっと効果があるんじゃないかなんて思ったり。 マッサージしてもらったけど、これも翌日に疲労を残さずにいた。 ジャスティンのおかげで、改めてトレーナーという仕事についてじっくり考えてみれば、なんだか自分に合った職業に思えてきたから不思議だ。 「まあ、考えとく」 ロー・ジャスティンせんぞくの文字を消して、調査票を提出した。
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