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遠雷
【継side】
学校帰り、いつものように馴染みのスーパーで買い物をして表に出ると、今にも降り出しそうな空模様。ふと創をみれば、心配そうにこっちを見てるから、そのまま手を繋いで走り出した。後ろからはどんどん黒い雲が迫って来る。
創の嫌いな雷が、遠くで鳴ってるのが聞こえた。
「創、ちょっと急ぐぞ!」
「はあっ、わ、かった…っ!」
ぐっと力を込めて手のひらを握れば、同じ強さで握り返されるのが、こんな時に不謹慎なのは分かってるけどすげえ嬉しい。
早くも息切れし始めた創を半ば引っ張りながら、家への道のりをひた走る。二人分の足音と息遣い、そして、だんだんと激しくなっていく鼓動だけが、オレ達の間にある。
早く、速く。
いくらオレがいれば大丈夫だとはいえ、苦手なものには出来れば遭遇したくないだろう。怖い思いなんかさせたくないし。
とにかく早く帰って、一緒にシャワー浴びて、ベッドに潜り込んで抱きしめてやりたい。そんでそのまま眠ればいい。
「けぇっ、ちょっと、まって…っ!」
はあはあと息を切らしながら言葉にするのが、なんかちょっと腰にクる。あーあ、どんだけ好きなんだよオレ…
ゆっくりと足並みを緩めて、カバンに入れていたドリンクボトルの蓋を開けて渡してやると、ありがと、と微笑んでから一口含んだ。唇の端から滲むように濡れて行くのは、やっぱりエロいと思う。
「平気か?」
「ん…だいじょぶ、怖いけど、継がいてくれるから」
そう言って、再びぎゅっと握られる手のひら。ふわりと微笑むその笑顔は、どこか痛々しくて。
つん、と眉間のあたりを突いてやる。
「った…」
「ムリすんな、怖いんだろ?」
「…やっぱり継に嘘は吐けないね」
「当たり前だろ、誰だと思ってんだよ」
繋いだ手が、いつの間にか腕に絡んできていて、ぴったりと創が寄り添ってくる。めちゃくちゃ可愛いんですけどっ!ああもう、すれ違う人みんなに自慢してやりたい!
けど、その指先が微かに震えてる。それには気付かないフリをして、ゆっくりと歩き出した。
「…継?」
「大丈夫、オレがいるから。な?」
安心させるように微笑んでやれば、ホッとしたように笑ってくれる。
腕に擦り寄る暖かい体温を感じながら、帰ったらぎゅうぎゅうに抱きしめて離さないと決めた。
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