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大きな過ちを犯してしまいそうな夜
「なあ、なんでちゃんと俺を見ないんだよ…」
「っ、違う、ダイスケ」
「学校でだって目が合えばすぐ逸らすし、部活ん時は触れてすらくれなかった!」
手首を掴む力が強くなると同時に、小刻みに震えている。
「俺の事もうイヤになった?」
「…ダイスケ、違う」
「ヤれないやつは用無しか?」
「ダイスケ、そうじゃない」
「そりゃそうだよな、ただでさえ男同士で面倒だもんな」
「ダイスケっ!」
震える手を包み込むようにして、上からそれを握った。
ずっと合わせられずにいた視線を合わせる。今日始めてまともに見たその顔は、きつく眉根が寄っていて、その大きな瞳は今にも涙が零れ落ちそうなほどに潤んでいた。
ダイスケの気持ちに余裕が出来るまで待とうと決めてから、なるべく触れないようにしていたし、もちろん顔を見れば抑えられないのがわかっていたから、視線すら合わせないようにしていた。
さっきダイスケの髪を拭いてやった時は、体を冷やしたらいけないと思ったら、考えるより先にタオルを奪っていた。触れてしまったら、やっぱり我慢できなくて、ついキスをしてしまったけれど。
そこで止められたのは正直すごいと思う。だって、本当はもっともっと触れたいし、壊したいくらい抱きしめたい。
けれど。
違う、そんな顔をさせたいんじゃない。
「ダイスケ、違うんだ」
「じゃあ、なんで…なんで、」
「…どうしていいのか、わからないんだ」
温められたその細い体を引き寄せて、そっと背中に手を回す。肩口に顔を埋めて目を閉じれば、ダイスケの両腕に包み込まれた。
ドキドキと煩いこのハートビートを、シャワーの音が消してくれないだろうか。
「ダイスケの事、大事にしたいのに、触れてしまったら壊してしまいそうで怖い。好きすぎて自分だけのものにしたくて、無理矢理にでも…と思ってしまう」
「そんなヤワに出来てねーよバカ」
ふう、とため息が耳元で聞こえる。
とんとんと優しく背中を叩かれて、そっと顔を上げた。
「…待つと言ったが、どうやら無理そうだ」
「おう、望むところだ」
こつんと額を合わせて見つめ合う。たったこれだけで胸がいっぱいになった。
嬉しくて、幸せで。ダイスケもそう思ってくれないだろうか?
「お前に見つめられると嬉しくなるし、触れられればそこが熱くなって、もっと触れて欲しくなる」
「ああ、オレもだ」
吸い込まれそうなほどに見つめられる瞳。堪らずに目を閉じれば、少し乾いた唇が重ねられた。
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