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大きな過ちを犯してしまいそうな夜

ザアアッとシャワーの音が聞こえる。ガラスの向こうにうっすらと影が見える。 いや、けして覗いてるんじゃないぞ!ダイスケの着替えを持って来ただけなんだっ! 「ダイスケ、あの、着替え…」 ………返事が無い。シャワーの音で聞こえないのか? 今度はガラスをノックして、同じ事を言ってみた。 「ああ?悪い、聞こえねぇ」 「っ?」 いきなりそのガラスが開いてダイスケが顔を出した。濡れた髪や肌、火照った頬に垂れる雫がものすごくエロティックだ。 直視出来ずにすぐに視線を逸らして、着替えを持って来た事を告げUターンしようとしたが、くいっと手首を掴まれて引っ張られる。恐る恐る振り返れば、どこか不機嫌な様子のダイスケがいた。 「なあ、入らねえの?」 Oh Jesus!!!! ザアアアアッ………… ザアアアアッ………………… まずい、非常にまずい状況だ。 脱げ。入れ。そう言われて逃げ出すわけにもいかず、半強制的にバスルームへと連れ込まれた。 湯船に手足を投げ出して体を温めるダイスケの横で、小さな椅子に座りシャワーを浴びる。頭からざっとシャンプーを洗い流して目を開ければ、じっと見つめてくるダイスケの視線が突き刺さる。 「こっち、入れよ」 「あー、いや、そういう習慣が無くてだな…」 「ふうん…」 いたたまれなくてボディソープを泡立てて、めちゃくちゃに体を擦る。相変わらず不機嫌そうな声。 ぱしゃ、というお湯の跳ねる音がした瞬間、先ほどと同じように手首を掴まれて引っ張られる。 「なあ、お前なんで俺の事避けてんの?」 「いや、そんなつもりは」 「じゃあ!ちゃんと俺を見ろよ!」 ダイスケの頬を伝う雫が、とても綺麗だと思った。

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