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第5話

 バスローブに着替えた大輝が帰宅した雅己を出迎えたのはそれから二時間後の事だった。  ツイードのオーダースーツが似合う年齢になった雅己は、大輝の髪がまだ濡れていることに気付き問うた。 「――慎吾は?」 「おかえり。早くシャワー浴びておいでよ。母さんなら寝室で待ってるよ」  上着を脱ぎ、ネクタイを外しながらポンと肩を叩く大輝を軽く睨んだ。 「――お前、もうヤッたのか?」 「当たり前じゃん。病院の先生に言われてただろ?発情期寸前が一番確率高いって……。だから“俺の分”は子宮の中にある」  息子の勝手な言い分に呆れながらも、雅己はカフスボタンに手をかけた。  すぐそばに自分の身長とそう変わらない大輝が立ち、耳元に顔を寄せた。 「神様はどこまでも意地悪だ。お前たちの息子として純血のα種で生まれて来たのに……」 「願ったものはすべて与えられるわけじゃない」 「身を以って知ったよ。――まさか、また生殖能力が半分とか……。あり得ないだろ」  大輝は雅己の腰を抱き寄せると耳朶に舌を這わせた。  ねっとりと動く舌先に、堪えていた吐息が漏れる。しかも、それをしているのは十五歳の中学生だ。 「――弟が欲しいよ、父さん」  くすっと息を吹きかけながら強請る大輝にチラリと視線を向け、雅己がふっと口元を緩めた。 「――子供の間違いじゃないのか?」 「そうとも言う……。父さんと俺とで一人前。そこまで神様に忌み嫌われる双子っているのか?」 「ここにいる……だろ」  わずかに顔を傾けて、まるで誘うかのように唇を舐めた雅己に、大輝は薄い唇に綺麗な弧を描いた。  一卵性であってそうでない実の兄の手が、そっとスラックス越しに尻を撫でた。  時々ギュッと尻たぶを掴んでは、その弾力を確かめている。 「――早く、シャワー浴びておいでよ。母さんが待ってる」 「あぁ……」 「俺も待ってるから……」 「大輝?」  大輝の長い指が雅己の双丘の割れ目に沿って下りていく。  スラックスの生地をぐっと押し込んで、その奥に眠る蕾に触れた。 「はぁ……」  それを合図に舌を伸ばした雅己に、大輝は自身の唇を重ねた。  クチュクチュと激しい水音がリビングに響いた。  互いが獣の血を引くαだけに、求める時は妥協しない。 「――お前が慎吾を抱いて、俺はお前を抱く」 「元天使とは思えないな……」 「イヤか?」  雅己は唇に纏ったダイキの滴を舌先で舐めとりながら不敵に笑った。 「まさか……。また兄さんと愛し合えるって考えただけで勃って来た」 「バカだな……。俺たちが愛し合うんじゃない。慎吾を愛して、俺たちは繋がるんだ」 「転生しても子種は大輝のものだろう?近親婚は許されていない……」  すっかり勃起した雅己のそれをスラックスの上から優しく撫でながら、大輝は青緑色の瞳を妖しく輝かせた。  あの時の澄んだ空色はそこにはもうない。  誰をも魅了する悪魔の瞳に似ていた。 「――安心しろ。俺たち一族は血が濃ければ濃いほど有能になる。俺の力を信じろ……」 「大輝の力……?んあぁ……っ」  自身をギュッと強く握られ、あられのない声を上げる。  大輝の肩に顔を押し付けて、荒い息を繰り返す雅己の耳元で低い声が鼓膜を震わせた。  妖しく艶のある美しい声……。  その声に雅己は全身が総毛立ち、小刻みに体を震わせて射精した。  天使の声か――。それとも……。 「三人で深い闇に堕ちよう……。そして――ひとつになる」

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