1 / 51

第1話

ぼく以外、誰もいない放課後の教室。 野球部の掛け声をBGMに、いつもの定位置につく。 外が見える、1番後ろの席の窓際。 「今日は、隣のクラスの早川さんか……」 正門に向かって歩く2人を見ながら、ぼくは呟いた。 17時45分。宮原 蓮ーーぼくの想い人はこの時間になると、毎日別の女の子を連れて帰っていく。 授業が終わってから今まで、何をしていたのかは知らない。……でも、想像はつく。 学内には、使われなくなった第二資料室……通称ヤリ部屋が存在する。 きっと彼らはそこで過ごしていたんだろう。 女の子が蓮くんの腕に擦り寄るが、彼は嫌そうにしてそれを跳ね除ける。 ーーモテるのに、特定の女を作らない。 これは、学内でも有名な話だ。何か理由があるのかもしれないけど、真実は誰もしらない。 そんなことを思いながら、だんだん小さくなっていく2人を見続ける。 「第二ボタンまで開けてた。今日も格好いい……蓮くん、好きだよ」 正門から出て行く彼の後ろ姿に向かってそう呟くと、ぼくは鞄を持って教室を後にした。

ともだちにシェアしよう!