4 / 51
第4話
彼について知るのは簡単だった。
休み時間中隣の教室に出来る人集り。その中心にいるのは、もちろん彼。
「蓮?、たまにはウチらも構ってよ?」
「宮原は、女といるよりダチの俺らといる方が楽しいよな?」
彼の周りにいる人たちの会話を聞いて、宮原 蓮 という名前だっていうこともすぐに分かった。
軽く着崩した制服に、少し長めの茶髪。そして、髪の間から時折見えるピアスを付けた耳。
誰もが羨む格好よさだ。
「俺はみんなといるのが楽しいよ」
微笑みながらそう答えた彼の言葉に女子は黄色い声を、男子は肩を抱いたりハイタッチをして喜んだ。
その様子を遠くから見ているだけなのに、体が熱くなり心拍数が速くなる。
(宮原 蓮……くん)
彼ーー宮原くんの名前を心の中で何度も呼ぶ。
それだけで、ぼくの目の前に広がる世界は輝いて見え、今までと違う気がする。
恋を自覚したばかりのぼくには、すごいことに思えたんだ。
でも、初恋のぼくにも分かる。同性を好きになるのは、世で言う普通じゃないことだと。
だからこそ、ぼくは何も望まない。
今まで通り【隣のクラスの同学年男子】程度の認識のされ方でいいんだ。いや……むしろ、認識されていなくて構わない。
ぼくがあなたを知っていれば、それだけで十分。
だからーー宮原くんのことを目で追ってしまうのだけは、許して。
ともだちにシェアしよう!