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第2話

 今夜も安いだけが取り柄のバーで悪酔いしかできないウイスキーを喉に流し込む。世間の裏側でしか生きられない奴らと目配せして自分の縄張りを死守する。  たった50センチ。  自分のまわりの50センチだけが俺の縄張りだ。バーカウンターで隣り合ったやつと肩が触れないぎりぎりの範囲。小さく肩をすくめて、それでなんとか自分を保っていられる。こんな世界は幸せからは程遠い。  俺は何も持たないし、与える誰かもいない。ましてや世界と繋がるなんて出来るわけがない。俺のまわりには50センチの安楽をもたらす鉄壁の要塞があって、なにものも拒絶するのだから。  悪い酔いが体を痛めつけるままに、よろよろと街をさ迷う。小汚い部屋に戻ることを考えると憂鬱だった。ごみ溜めの中で寝るのはゾッとしない。公園のベンチで凍死したほうがましだ。  路地を曲がって公園に向かう。  街中だというのに鬱蒼と木々が生い茂りネオンも家灯りも届かない暗闇がわだかまっている。  暗闇に慣れるまで公園の入り口でじっと目をつぶっていた。  静かすぎる公園の奥から人の気配がする。  人に会いたくはなかったが、ベンチは公園の奥にしかない。酔いで頭が回っていない俺はよく考えもせず歩き始めた。

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