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第6話

 段ボールの隙間から差し込む朝日で目を覚ました。二日酔いと、固いところで寝たために固まった体、気分は最悪だった。隼人はと見ると、安らかな表情で眠っていた。いや、違う。隼人の鼻に手を当ててみると、息をしていなかった。  俺はしばらく隼人の顔を見下ろしていた。猿のようだと思った笑顔が、今はとても美しく見えた。  段ボールハウスから這い出て腰を伸ばした。よろよろと歩いていくと、公園の入り口に行列ができていた。隼人が楽しみにしていたおにぎりの炊き出しのようだ。ぼんやり見ていると一人のじいさんがよってきた。透明なパックに二つ入ったおにぎりの一つを取り、残りのパックを俺に差し出した。 「ホームレスじゃなきゃ炊き出しはくれんのや」  俺は礼を言っておにぎりを受け取った。段ボールハウスに戻り、隼人の枕元におにぎりを置いた。  隼人は今にも目を覚まして口を開きそうに見えた。  その唇は今にも開いて、年に見会わない人生訓をたれそうだ。けれどもう、その言葉は聞くことができない。 「もっと、早く会いたかったな」  隼人の開かない唇にキスをした。  朝日をくぐって公園を出た。早朝の冷たい空気を思い切り吸い込んだ。なんだか久しぶりに息をした気がする。空が青い。  俺は昨日よりほんの少しだけ、幸せを感じた。

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