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第39話

ふいに、梅の甘酸っぱい香りが鼻先をくすぐった。 それから高下駄の軽やかな音が外から聞こえてくる。 「…早々にお出ましのようじゃな。怖い怖い」 「雅さん、一体だれが…?」 肌に触れる空気の温度が冷たい。凍てついたような冷気だ。 袂をぎゅっと握った俺の背中に手を当てながら片膝を上げる。 「すまんのう、音羽。客人を迎えねばならぬ」

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