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「あっ、あれって同じ学年の柚葉君だっけ?」
女が「おーい、柚葉くん!!」と大きな声で呼ぶ。
人混みでも耳に入る大きさ、もちろん柚葉にも聞こえていて、振り向いて柚葉が目を合わす。
女でなく、俺と。
こちらにくれば柚葉は女に
「こんばんわ。どうかしたのかな?」
と、いつもの学校モードの顔と声色で尋ねる。
「今から朱寧くんと屋台回るんだけど、柚葉君も一緒にどうかなあって!」
「は?!だから、俺は回るなんてッ──」
「俺は今から帰るところだから。ごめんね……朱寧と楽しんできて?」
「そっかぁ、残念!またね柚葉くん」
「うん、またね」
「ちょっ、柚葉ッ!!」
柚葉は俺に視線を向けると、ひどく冷たい顔をして俺から遠ざかっていく。
嫌だ。嫌だ。
「ほら、行こ朱寧くん」
……何でこうなるんだよ。
「離せって!こっちはお前と回ってる暇なんてねぇんだよ!!ほんとにごめん!!!」
意味のわからない言葉をその女に言いつけ、腕を無理矢理振りほどいて、柚葉が消えた方向に走る。
行かないでくれよ……柚葉。
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