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第10話 シュークリーム[4]

終わった……。 RPGのような階段を降り、雑踏を抜けて帰り着いた。 緊張して余計な力が入ったせいで、身体中が重だるい。自室に帰る前に、ひとまず那須ママが待つVenusへ立ち寄ると、出迎えてくれたのは寮の先輩達だった。 「お疲れさま船山ちゃん、どう?どう?」 「よりによって日曜日に歯の詰め物が取れるとはねー!!」 「那須ママが商店街の顔役で助かったな!船山ったら、休日診療所の当番の歯科医なんか、どこの誰だかわからん人だ、怖くてかかれないーって言い張るしー!!」 「「 子供かよ!うわははははっ 」」 土井さん笑い過ぎです。 服部さんうるさいです。 歯医者嫌いなんですっ!仕方ないじゃないですか!! 太い血管が走っているところは言わば急所。わざわざ他人に触れさせる事なんてシンジラレナイ… 休日診療所に詰めてる得体の知れない当番歯科医より、素性が判っている人の方が多少は安心できるんじゃないか、との助言は的を射ていた。 住み込みの個人開業歯科医なら、急な対応だってしてくれるに違いない。その後の治療にも通いやすいし。 幸い今回は、外れた被せ物をそのまま付けられたので、通わずに済んだ。 今日の歯科医は、この商店街で最もプライベートに謎が多い。(だけどいいオトコ♡)と話題の人物だそうだ。 「休日に無理を言って開けてもらうんだから、感謝してよね?お礼なら、センセイの素顔の写真で良いわよ♪ 」 那須ママからの密命は、敢え無く失敗。 …頑張ったんですけどね、あのセンセイ、ガード硬すぎてダメだぁ。ママごめんなさい! 土井さんと服部さんが肩を揺らして笑いを堪えている。 「やっぱり船山だよなー!!」 ……あ、やっぱり言われちゃうのか、アレ。

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