60 / 66
第20話 止まんない
「ちょっと待て、船山。もうそれ以上触っちゃダメだ」
「え? ぁ、ああっ!」
いくら経験が浅いからって、そんなのは見ればわかるだろう。今にもはち切れそうに熱を蓄え震える様子は、少しの刺激がキッカケで簡単に頂点を越える。
案の定、熱い迸りが溢れて来て、こうなったらコントロールなんか出来っこない。
「あ…あああ、服部さん、止めてこれ。止まらない、ダメ、止めたいのに…」
だから諦めろって。濃厚な白濁は勢いは控えめながら止め処なく溢れ続ける。船山が悪いんだからな。先に俺は言ったはずだよ?
顔を赤らめ、うっすら涙を浮かべた船山は、やっと今更もうどうすることもできないのだと気付いたのか全身の力が抜けた様子で、小さく両手を挙げた。降参。参った。お手上げ状態。ハナっからわかってたよ、素人のくせに背伸びしやがって。
「あーあ、出ちゃった…」
自分の粗相に半ば放心の可愛い後輩。その肩にそっと手を乗せ、責めないように、自尊心を傷つけないように伝える。
「買い物に行こう。俺の行きつけの肉屋で、赤身の肉を二度挽きしてもらおう。それから、ちょっと高級な大型スーパーで、ブロックのパルメザンチーズを買おう。な?」
貴重な休日の午前中、「テレビでチーズインハンバーグの作り方を観たんです。俺でも作れそうです!材料あるから昼飯にご馳走しますよ」と部屋に誘ってくれた後輩。脂の多い特売の豚ひき肉と、ピザ用のシュレッドチーズでチーズインハンバーグを作ろうっていう発想がそもそも素人だろ。
豚ひき肉のハンバーグを否定する気は無いが、加熱が不十分では安心して食べられないし、脂身の多い特番用だと焼いている間に縮みやすい。肉に火が通る前に、溶けるチーズの細切りが液状化するのなんか想像に容易いじゃないか!
ただでさえ素人は焼きながら突きたがる。
そりゃあ中身が全部溢れるだろうよ。予想を裏切らない展開に、笑いが止まらない。
昼は"チーズの羽根つき肉の塊"を二人で突つこう。夜は…しょうがない。俺が作って見せて、喰わしてやろう。
二食続けて肉ばっかりだな、土井ちゃんも誘ったら、野菜たっぷりの副菜を作ってきてくれるかなあ。
<チーズインハンバーグ編おしまい>
ともだちにシェアしよう!