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第15話 連休はベッドの上で[3-終-]服部

 大型連休の最終日。形ばかりの帰省から戻り、なんとなくひとり飯も億劫で、取り敢えず土井の携帯を鳴らした。  コール1回で着信。でも、なんだか歓迎されていない口ぶりが気になる。通話の向こうに小さく聴こえるモーター音のようなノイズ。そして、スー、スーと規則正しく続くのは誰かの寝息??  もしかして…!!  「…土井サンッ!ワタクシ貴方ニ恋人ガイルトハ知リマセンデ大変失礼致シマシタ!オ取リ込ミ中デシタカ、ソレデハコレニテ… 」と電話を切ろうとした時、慌てて状況説明が始まった。  船山の部屋の鍵は開けてあった。素早く滑り込み、しっかり施錠した。  靴を脱ぎ、そろりそろりとベッドの上へ移動する。土井が人差し指を口元にあて、静寂を守れと伝えてきた。  成人男性3人が乗るにはシングルベッドはさすがに狭い。熟睡する船山を踏まないように座り、脚を投げ出した。  ベッドの下から微かなモーター音が聴こえる。ウィンウィンウィン…空回りしてるのか?気の毒な音だな。  「なに?この図面…この部屋?」  「船山がね、赤鉛筆でチェック入れてたんだけど、ほら、こんな按配だから…」  スヤスヤと眠りこける船山。  「…だから途中から引き継いだ。」  軌跡を記録していたのか。アホ可愛い奴め。途中から引き継いで記録してやる土井も可愛いけどな。  室内を見渡すと、部屋中に…特に玄関周りと家具の足元あたりにカラフルなビーズ。BB弾か?  「ひとりで篭って何してるのかと思ったら、念願の を買って、機能チェックしてたんだよ。ちゃんと隈無く掃いてくれるのか、死角は何処か探ってたんだって。あとさ、充電が無くなりそうになったらホームデッキに戻るのも自分の目で見たかったんだって。」  「…気の長い話だな、初回は3時間くらいかかるんじゃないの?」  本人は寝てるから、気兼ねなく馬鹿にした言い方をした。  「俺も、馬鹿か?と思ったんだけど、一緒に見てたらさ、あのダイニングの四つ脚の椅子、あれの下が幅が狭くて掃除機が入れなくてさ、あれこれ手を変えてアプローチして、背もたれ側が少しだけ幅が広くて進入可能!と判断してちゃんと任務を遂行しやがった!!凄いのな、なかなか。」  …土井、絆されたな。  「地雷除去、だろ?」  「何?」  「ロボット掃除機のプログラム。最新の地雷除去の特許技術が転用されてるんだって。だから、こんなちっぽけな部屋くらい、隈無く掃いて回れるんだよ。充電の残りも計算尽くだろうなぁ。電源に近い玄関を最後に残す辺りがニクいね!」  で、船山が先に充電切れ、か。可愛いなあコイツ。  「船山の所、4月から残業が多かったからね。こんな休日も良いんじゃない?」  「ああ、そうかもな。起こして何か喰わせてやろうかね。」  留守の後だから、自室の冷蔵庫の中身はアテにならないな、冷凍庫のピザでも焼くか。サラダは人参の千切りをレモン塩とオイルで和えたらいい。  献立に気を取られている間に、玄関から電子音が聞こえてきた。  「ぴ・ぴ・ぴ…」と鳴りながら、最短距離でドックに戻ってくるロボット掃除機。  船山は、これが見たかったんじゃなかったか?起こしてやるか?…と思っている間に、くるりんと向きを変え、奴はデッキに吸い込まれた。  「「あ〜あ…」」  寝てるし!船山寝てやがるし!肝心な時に此奴はっ!!  ああ〜あ!  明日からまた通常営業。まだまだ定時では帰れない。  留守の間に掃除機の仕事は終わるから、しばらく今のピピピは船山の耳に届きそうにない。  可愛くて可哀想な後輩を労う晩飯、ご馳走してやろう。土産に買ったご当地限定ビールも出してやるか!  毎度の事ながら、俺たちは船山に甘過ぎるよなぁ〜!  <ロボット掃除機編 おしまい>

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