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第6話 キミヲコワシタイ【4-終-】

しばらく馴染ませ、軽く揺すってみる。これから動かす為の、僅かな隙間を作る。一度衰えた熱を取り戻したのを確認し、こちらのイメージ通りに角度をつける。 引き剥がし、のしかかり、タイミングを合わせて裏返す。 熱を味方に、まるで意思を持ったように膨張し始めた。可愛い奴め。 焦らしていたつもりだったのに、何時の間にか形成逆転? 焦らされているのは俺の方なのか… さて。美味しいうちにいただくとしよう。 待てよ、これは1人で楽しむには大きいな。…シェアするか。 「えー!出汁入れないのぉ?巻かないのぉ!?」 「これて良いんですよ!おふくろの玉子焼きってこの味だったんです!!」 「だってこれコチコチだ。やたら甘いし。ふっくら香りの良い、薄い層が重なっただし巻きと比べて何処が勝ってるって言うんだよ」 「いいんですっ!弁当には欠かせない完全加熱した甘い玉子焼きなんですっ!!」 この罪に巻き込まれた事に一言の文句も言わず、甘い玉子焼きの存在を否定するのは、寮の先輩土井さん。 男2人で黙々と甘い玉子焼きを平らげる。そんな木曜の夜。 玉子に印字された数字が今日のことだと気付いた時から、俺の思考回路はこのミッションに完全に乗っ取られたんだ。 和食党の土井さんには大不評だけど、俺的には満足!たまに食べたいんだよ、お弁当のアイドル「甘い玉子焼き」。 こうして、発見された特売の玉子1パックは、賞味期限最終日の23:45に、無事胃袋に収まった。 <甘い卵焼き編おしまい>

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