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第8話 放置
立たせたまま待たせるなんて酷い。
我慢比べか?また何か俺を試そうとしてるの?
俺のてっぺんに何やら細工し、先輩は嬉しそうに「イイコだ」と囁き、頭をひと撫でして視界から消えた。
まぁ実際、この関係は俺の方が常に言いなりだから仕方ない。
主導権を握られるのは嫌じゃないし。
今日どうしても!と願ったのは俺。
休日を無理矢理空けさせ、誘い出した。
でもやっぱり…
立たせたまま待たせるなんて…ヒドいっ
我慢の限界が近づき、頬が紅潮している。
こんな所を見られたくないのに。
。。。。。。。。。。。。
「おお!列が進んでいるではないか船山!」
はいあと15組です。
「何か言いたそうだね?船山!」
…いえ別に。
ズルいです服部さん。こんな女子だらけの列に一人で並ばせるなんて!男が居るだけでもチラ見されるのに、何かしましたね!?
俺の頭に何乗せたんですか!?
「え?トナカイの帽子だよ♪LEDで鼻が光るの。お前、薄着だったから。頭覆うと少しはあったかいでしょ?」
……
「目立つから、向かいの本屋のビルからでも船山が何処にいるかすぐ分かったよ!2時間待ちも当たり前だったけど、40分でここまで進むなら順調順調!」
確かに、どうしても食べてみたいからと服部さんを誘ったのは俺。どんな横暴にも耐えますよ今日は。
しかし、こんなに長く寒風の中を待たされるとは思わなかった…
寒い。
マッチ売りの少女が売り物のマッチを擦ってしまった気持ちも解るよ。火が灯る度に、ふわふわクリームの山に美しく飾られたフルーツ、焼きたての丸いパンケーキが見える…
俺を暖めてくれ!(とにかく建物の)中に入りたい…っ!
夢にまで見た原宿の有名パンケーキ専門店に足を踏み入れるその前に、日曜日の午前中は消えていった。
<人気パンケーキ専門店編おしまい>
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