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第3話
取引先の部長を接待し、タクシーに乗せて送った。
これも仕事とセクハラまがいな行為にも堪えながらかなり飲まされていたので、気が抜けると同時に一気に酔いが回った。
そうして気づけば目の前に知らない男二人。
「ね?それないと、コイツ困んのよ。」
そう言ってニッと笑った男に、アルコールでザクザクと音をたてながら流れていた血液が更に速まった。
なんだ、これ...
取引先のジジイ(部長)と同じくらいの年齢だろうか。
細身のスラッとした男。
笑った瞳の縁は僅かにシワが寄っていて、なのに全然ジジイに見えなくて。
血流が速まるどころか下半身に血液が集まる。
覚えのある下半身の熱さに、もしかして今ならセックスできるんじゃないかとバカになっていた頭が叫んだ。
だって、突っ込んでみたいんだよ!
男なんだから!!
「放せ、この酔っぱらいが!女の子行っちゃったじゃないか、バカ野郎!」
「だ~か~ら、俺とヤろうっれ!気持ちよくすっから~!」
初めて会う、全く知らない男の腰に抱きつき、呂律の回らない口調で誘う。
頭の中は『脱童貞』のことしかない。
人の目だの、無茶苦茶なことを叫んでいるだの、そんなことはどうでも良くて。
とりあえず逃がすまいと必死だった。
そうして連れてこられたマンション。
経験の少なさを隠すように男の唇に噛みついた。
それが功を奏したのか、突如乗り気になった男の舌が熱く絡まる。
やっばい、なんだこれ...めっちゃきもちー...
押し倒され、欲の染まった瞳で見つめられれば背筋がゾワゾワとした。
女のような名前を「可愛い」と言われ、腹が立つよりも俺もこの男の名前を呼んでみたいと思った。
「譲さん...」
甘えたような声が自分の口から発せられる。
こんなの、まるで女だ。
気持ち悪...
そう思うのに、坂木と名乗った男はどこか嬉しそうで。
身体を引き寄せれば裸の胸に乾いた衣服が擦れたー。
「雫...脱がすから腰上げて?」
「ん...」
言われるがままに腰を上げれば、一気に下着ごと脱がされる。
現れた自身はすでにカチカチで今更ながらに羞恥心が沸き上がる。
「酒飲んだら勃たなくなるって言うけど...そんなこともないみたいだ。」
クスクスと笑いながら言われ「うっせぇ...」と顔を反らした。
「良いことだろ。」
「っ、」
そう言ってまたチュッと首筋を吸われ、身体がビクッと震えた。
坂木さんのキスはさっきから俺をおかしくする。
...ていうか、なんだろう。
この甘い雰囲気...
バサッ...と俺の上で衣服を脱いでいく坂木さんをジッと見つめる。
ん?
なんか、違うよな...?
なんで俺...今下になってんだ?
俺が見下ろしてるハズだろ?
なんで見上げてるんだ?
「ん...っふ、」
重なってきた唇に応えながら疑問符が浮かぶ。
やがて大きな手が腰を撫で、太股に触れてきたところでハッとした。
ちょ、まて!!
まさか...!!!
「プハッ...!ちょっと、待って...譲さん?」
「ん?」
濡れた唇から逃れるように顔を背け、のし掛かった身体を押した。
優しく微笑んで見せるその表情にまたドクッと心臓が音をたてるのに気づかない振りをし、恐る恐る口を開いた。
「その、もしかして...ヤるの、か?」
「うん?ヤるんだろ?」
何を言ってるの?と首を傾げるその様子に、血の気が引いた。
「いや、ヤるんだけど。その、ヤりたいの!」
「......は?」
意味が分からないのかキョトンとしている。
アルコールでフラフラながらも身体を起こし、坂木さんと向き合う。
そうしてその俺より引き締まっていそうな肩に手をかけると、真っ直ぐに顔を見つめ告げた。
「だから、俺が譲さんをヤりたいの!マウントとりたいの!!」
「...............はぁあ!?」
薄暗い部屋の中、たっぷりと間を開け坂木さんのひっくり返った声が響いた。
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