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見ざる・聞かざる・ただの猿

 毎年行われる、出版社主催の新年パーティ。  今年は一緒に涼一も来ているので、無駄に力が入っている。なんてったって、いいトコ見せたいからな! 「おいおい、桃瀬ぇ。やけに鼻の穴が広がっているが、何を興奮しているんだ?」 「くっくっく! これが興奮せずにはいられませんよ編集長。今年こそは大賞を受賞してやろうと思いまして」 「ぁあ……毎回やってる余興のことか。今年のお題はきっと『申サル』だろうな。去年が未ヒツジだったんだから」  昨年は何故か俺の絵を見て、みんなが驚愕の表情を浮かべてくれたのだが――今年は違う意味で、驚いてもらおうじゃないか。  この日のためにちゃっかり、サルを描く練習まで念入りにしたのだ。大賞をとらないワケがない! 「さぁて、今年もやってきました。編集部対抗お絵かき大会を開催します。代表者は前に出て来てください!」  パーティが終盤に近付き、いつものごとく号令がかかったので、わらわらとあちこちの精鋭がステージ上に集まってきた。  テーブルに置かれているスケッチブックを、じっと眺める。そこからぼんやりと下絵になる、輪郭を思い描いていくんだ。 「今年のお題は、干支である『申サル』です。制限時間は5分間! 一番出来のいい絵を描いた編集者には、金一封を差し上げます。よぉい、ドン!」  号令とともに、頭の中に思い描いたサルを、鉛筆の音を立てながら手早く描き、ばばばっと色を塗っていく。  普通にサルを描いても意味はない。何故なら周りが普通のサルを描くからだ。  サルといえばケダモノ。ケダモノといえば血が滴っている物を好むだろう。これを見て涼一が怯え、俺に抱きつくのもアリかもしれないな←策士、策に溺れる事を桃瀬は知らない  そんなことを考えていたら、自然と口角が上がり、更に色を塗るスピードが上がっていった。  後から聞いたのだが、このときの俺の姿が異常だったと、編集長が言ってくれたのだが。きっとあまりの格好良さに、嫉妬しただけだと思うんだ。   「残り時間はあと1分少々です!」 「はい、出来ました!」  カウントダウン前に、難なくお絵かきが終了したのは、俺だけだった。さすがは天才、早さにかけても逸品なのである。 「あ……桃瀬さん。皆さんが終わるまで、ちょっとだけお待ちくださいね」  俺の描いた絵を覗き込み、何故か顔を引きつらせながら、ズリズリと後ずさりして行く司会者に、首を傾げるしかない。  ふて腐れている間に時間が来て、ステージ上からみんなに見えるように、スケッチブックをそれぞれ見せた。  ざわざわ∑(*。*;ノ)ノΣ(゚口゚;)//∑(゚◇゚;)ヘ(゚曲、゚;)ノ~ ヒィイイイイイ!!  何か会場がザワついている。どうしてだ!? 「あー、司会者さん。ちょっといいか? ウチの桃瀬の作品が群を抜いて、すごいコトになっている件について……もう大賞をやってはくれないだろうか? そして来年から司会者として、そこに立ってもらうという資格を与え、これ以上の衝撃を避けたいという提案をします」  何故か手を上げて意見しだした三木編集長に、周りがうんうんと頷き、勝手に俺が大賞をとってしまって―― 「良かったね、郁也さん。来年から司会者だって、頑張ってね」  手にしているスケッチブックを裏返され、抱きついてきた涼一に、苦笑いするしかなく。そんな俺たちに温かい拍手がされたので、一応一件落着した。  どんな絵だったかって?  これですが、なにか問題あったのか? おしまい ※いつも楽しんでみてくださり、ありがとうございます。 今年からは、学校の関係であまり描く時間は少なくなりますが、リクエストがあればコメントをしていただけると、遅くはなりますが描かせていただきます。 最後になりますが、桃瀬はとても楽しんでます。                           桃瀬

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