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黒猫との遭遇
執筆最中に、どうしてもプリンが食べたくなった僕は、夕方になるちょっと前ひとり、コンビ二まで歩いて行った。
本当は、文明堂のなめらかプリンが食べたかったけど、お店まで行くのが遠いため、コンビニスイーツで、ガマンすることにしたのだけれど。
「むーっ、結構種類があって、悩んじゃうな。いろいろ買ってみて、郁也さんと食べ比べたら、買い込んでもいけるかも」
ぶつぶつひとりごちて、かごの中に全種類のプリンを入れて歩く。ついでにシュークリームも買っちゃえ(´∀`)
お会計を済ませてビニール袋片手に、夕暮れに染まろうとしてる町の風景を、ぼんやり眺めていると、上の方から猫の鳴き声が聞こえてきた。
「ん? 何故に上から声がするんだろ」
キョロキョロしながら、頭上をよぉく見てみると、目の前の街路樹に黒猫が1匹、こっちを、じーっと見つめているではないか。
「どうしたの? そこから降りられないとか?」
『に゛……ゃあぁん!』
可愛らしいとはいえない鳴き声で鳴いて、前足をふるふると動かした。
――もしかして、僕に向かって飛びつこうと狙ってる?
金色の目を光らせて、僕の顔を見つめる黒猫の雰囲気が、正直怖かった ((;゚ェ゚;))
首輪をしているので飼い猫だと分かるんだけど、どうしてこんな高い木の上にいるんだか。
僕を狙っているのなら――
「分かったよ。こっちにおいで、受け止めてあげるからさ」
黒猫に向かって手を伸ばすと、
『にゃあぁん!』
まるで返事をするように鳴いてから、後ろ足で勢いよく、僕に向かって飛びついてくれた。
しかし勢いがありすぎて、僕の手をすり抜け、着地した場所は、何と頭の上……
飛びつかれた衝撃たるや、殴られた感じなんですが(汗)
ふらふらしながら黒猫に手を伸ばしたら、一瞬早く飛び降りて舗道に着地し、僕を見上げてくれた。
『に゛に゛ぁあぁん』
微妙な鳴き声でお礼? を言うと、一目散に目の前から、消えるように走り去って行く。
「結局僕は、踏み台で終わってしまった……」
顔を引きつらせながら、帰ろうと歩き出すと――
「すっげぇトコに遭遇できた。ありがとな涼一」
聞き覚えのある愛しい人の声に、喜んで振り向くと、何故かスケッチブックを手にした郁也さんが、ニッコリと微笑んでいるではないか!
「……えっと。どうしてそこにいるの?」
他にも聞きたいことがあったけど、まずはこれだろう。
「ちょうど帰るところで、目の前の救出劇を発見したからな。迷うことなく描かせてもらったぞ」
――今のを描いたっていうのか!?
「早速家に帰ったら、色を塗らなきゃな。忘れないように、記録しておかなければ」
あんな格好悪いところを記録するなんて(ノД`)シクシク
「悪いけど今のこと、忘れてくれないかな。僕としては、記録してほしくないことだから」
「何を言ってんだ。優しい涼一の姿を残さないで、どうするんだ?」
「ぜーったいにダメ! 描いたら絶交だからね!」
本当は黒猫と恋人のあたたかい姿を、描きたかった桃瀬画伯だったけど、諸事情により恋人の姿は手だけになり、黒猫メインで描くことになりましたとさ。
めでたし めでたし
PS:僕を描けなかった恨みなんだろうか。指の変形具合が半端ない。しかも黒猫の足が何気に内股になっているのも、怖かったりする(((;゚д゚)))『Hey Cat』ってどうして、そんなセリフを入れたのかも謎。
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