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芸術の秋

 郁也さんは凝り性な人だ。三木編集長さん曰く、 『桃瀬は痒いところに、手が届く男』  なぁんて賞賛されてるくらい、マメなひとなんだけど。その情熱がどこかで追求されちゃうと、時として周りが迷惑することがある。  今日はベッドの明かりをつけてしたいっていうから、渋々OKしたのだけれど、郁也さんが僕のことを見る視線が、いつもの違っていた。  理由は簡単。さっきまで周防さんと太郎くんの絵を、一生懸命に描いていたから。  描き足りないというんじゃなく、次の被写体を探してる感じなんだろうか。  ――只今、行為の真っ最中! 「ああっ……ん、っ……はぁん……」  なんて甘い声をあげる僕を、上から眺める郁也さん。何故か、両手の親指と人差し指を使って四角を作り、僕の顔に枠をあわせるんだ。 「も……アングル確認するの、あぁん……やめてってば……っん!」 「止めてと言いつつも、どうして中がいつもより、うねりまくっているんだ? しっかりと感じまくってんじゃねぇか」  心と身体はウラハラ。どうにも調整が出来ません。 「ホント、涼一の顔、すっげぇいい感じ。今すぐに見ながら、描いてやりたい気分」 「イヤだよ。あぁん……いい加減にして」  僕の顔に浮かぶ、いいのを見ようとしているのか、執拗に感じる部分を擦りまくってきた。 「ああぁっ、僕もうガマン出来ないっ! イっちゃうよっ……あぁあぁ、くぅっ――」  イってしまった僕の顔も、しっかりアングル確認してる桃瀬画伯……正直興ざめである。 (――んもぅ、ムカついた!) 「郁也さん、僕の顔を描くよりも、もっと面白いものがあるよ」 「ん? 何だ?」 「郁也さんの自画像。個人的に、すっごく見てみたいなぁ」  もうイったあとなので、余裕がありまくり、思い切ったお願いをしてみた。ていうか、郁也さん僕の中に挿れたまま、よく平気でいられるな。 「涼一のお願い事なら、何だって聞いてやるよ。喜んで、描いてやろうじゃないか!」  その後余裕綽々の郁也さんに腹が立ち、僕が上になって、ここぞとばかりに責め立てると、呆気なくイってしまったのは、ここだけの話。  ――何だかんだ、結構ガマンしていたようだ(笑)  絵の出来上がりは、画集に掲載する予定です。お楽しみに(・∀・)  めでたし めでたし?

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