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ガテン系おっさん

 涼一と一緒に久しぶりに、有意義な休日を過ごすべく、街中をブラブラしていた。 「暮れになると、あちこちで工事やってるよな。寒い中、大変そうに見える……」  横目に映った工事の風景を不意に口にしたら、立ち止まった涼一。 「ん? どうした?」 「……インスピレーションが沸いた。ちょっとメモしてもいい?」  恋愛小説家らしい言葉なれど、目の前にあるのは、道路工事に勤しんでいる、オッサンばかり――  大きな瞳をうるうるさせ、上目遣いしながら頼むものだから、イヤだなんて断れるワケもなく了承したら、カバンからネタ帳を取り出し、いそいそと何かを書きはじめた。  横で、ぼーっと突っ立っているのも暇なので、同じくカバンからスケッチブックを取り出し、描きやすそうなオッサンを、びびっとロックオン。  ロックオンしつつも、隣でメモをしている涼一がどうしても気になり、チラチラ中身を覗いてみた。 『滴る汗。それを拭う力強い二の腕。爽やかな笑顔。キビキビと働くイケメン多し』  ∑(`□´/)/ ナニィィイイイ!!  涼一が心を奪われるイケメン、どこにいるんだよ!? オッサンだけを必死にロックオンしていて、全然気がつかなかったぞ。  血眼になって、イケメンを捜しはじめたとき―― 「郁也さん、意外と上手に描けてるね」  涼一がスケッチブックを指差して、ニコニコしてくれる。それだけで怒りが、しゅーっと収まってしまった。 「そ、そうか!? (///o///)ゞ テレテレ」  照れた勢いで、いつもの文字を書いてやる。 「オッサンと郁也さん、どっちの頑張りが上かなぁ?」  含み笑いをしながら、意味深な発言をした涼一に、何て答えたらいいのやら――  オッサンには負けない自信、あるZE☆  という言葉を素直に言えない俺を見越して、体当たりをし、さっさと置いて行く。 「ううっ、涼一、待ってくれよぅ!」  スケッチブックをカバンに急いで仕舞って、デートの続きを楽しんだ。  勿論、夜も頑張ったことは言うまでもない!  めでたし めでたし((ノェ`*)っ))タシタシ

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