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思い出したくない事 6話

「タケル上見て!」 そう言われ車から顔を出した。 二階の窓からyoshiが手を振っている。 「おやすみタケル」 耳元で聞こえるyoshiの声。 「おやすみ」 豊川もそう返すと二階のyoshiに手を振る。 高校生みたいな恋愛に顔が緩む。 久しぶりかも知れない。こんな風に誰かを愛しいと思ったのは。 「嘉樹…」 窓を見上げたまま彼の名前を呼ぶ。 「なに?」 yoshiも豊川を見ている。 「好きだ…本当は今すぐ抱きたい…」 何故、言葉にしてしまったんだろう? きっと、溺れる。 電話の向こうのyoshiは言葉に詰まったようで、黙って豊川を見ている。 しばらく見つめて、yoshiは、  「俺もタケルが好き…今すぐ抱いて欲しい…行っちゃダメ?」 と答えた。 嬉しい!!誰かに必要とされてる事が嬉しい。愛してると言われる事が嬉しい。でも、それは豊川だからそうなのだと分かっている。自分も彼が好きだ……。 豊川は微笑んだ。 「お預けだ」 「えー、何ソレ?誘って」 「言っただろ?焦らすのが好きだって」 「ドS」 「今日は私をおかずに1人エッチしなさい、声聞いててあげるから」 「ば、バカじゃない!」 yoshiが二階で怒っている。 「私は嘉樹をおかずに抜くけどな」 「ちょ、まじタケルって変態」 「それだけ嘉樹が好きって事だよ」 豊川の言葉は心をきゅっと締め付けてくる。誰にも渡したくない。そんな欲がyoshiの心に芽生える。 「たける…、やっぱ今すぐ行きたい」 「は?もう抜いてんのか?」 「バカ!そのイクじゃないよ。」 「分かってるよ。からかっただけ。お預けだって言ったろ?おやすみ」 豊川は二階のyoshiに手を振ると車に乗り込む。 「ちょ、タケル!もう!バカ!」 走り出す車と一緒にyoshiの焦る声。  「意地悪!」 電話の向こうで拗ねる声。  「嘉樹…今から出て来れるか?」 豊川は少し離れた場所に車を停めた。  「うん!」 そう返事をしたyoshiは電話を切ると、慌てて用意をして外に出た。  やった!!やったあ!!飛び跳ねるくらいに嬉しい。 そして、停車している車を見つけ、乗り込む。

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