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第4話:【可愛いは正義なのか? 】客を誘惑する淫らな熊
五十嵐の視線を辿り兄崎は「可愛すぎる熊の縫いぐるみ」を見る。
天井から吊るされた、白い華奢な鳥篭には小さなピンクの薔薇を咲かせた蔦状のフェイクグリーンが絡まり華やかな演出をしている。
プラスティックとフェザーでつくられた淡い色合いの黒目がちな小鳥が二羽、足から生えたピックを折り曲げ、蔦と鳥篭に止る様がまた愛らしい。
少女趣味は良く分からないが、兄崎の目には童話の世界を思い起こさせる無垢な可憐さに映った。
その中に柔らかそうな細い長毛をふさふさと生やした羽を背負う白い熊の縫いぐるみが閉じ込められている。
正直鳥篭の可憐な美しさと、この縫いぐるみの愛らしさは調和しないように思えた。
どうせなら、籠の中は空にするか、葉も茎も無い造花でも詰め込むか、または、西洋人形でも座らせたほうがしっくりくる。
この鳥籠に閉じ込められた縫いぐるみの何が五十嵐の琴線に触れたのだろう。
「きっと、いろんな人間に撫でまわされて手垢がついて…嫌だ。耐えられない。今はあんな所から下界を見下ろしているけどきっと寂しいに決まっている。見てください、あの寂しげな表情。店員に客を誘惑する淫らな熊という烙印を押され謂れの無い罪と、根拠の無い罰を受けているのですね!今僕が助けてあげます!!」
「…淫らな熊…」
「皆が見てるぞ五十嵐!」
「まるで、僕を誘惑するかのように…滑らかな黒い瞳、繊細な毛で覆われた柔らかく円やかな体…抱き上げてくいれといわんばかりに差し出す両腕…今行きます!マリアンヌ。でも身長が足りない。兄崎先輩。四つん這いになってください。」
マリアンヌって誰だ。それよりも、お前。
「学園内でアイドル的人気を誇る俺を脚立代わりにするつもりか!」
「僕の出す本はカルト的な人気ですよ!!!」
「嘘つけや!」
「じゃぁ、肩車。」
籠はこのメンバーの中で最も背の高いフレデリックが手を伸ばしても、届く高さでもない。
脚立が必要だろう。
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