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第16話(兄弟)
タカトはいつだって憂鬱そうに教室の窓から外の景色を眺める。
授業がつまらないということも一理あるが、何より退屈だろうが授業が終わってしまうことに不安を感じてしまうのだ。
終礼まであと五分。このカウントダウンも本当ならばしたくはない。
迫りくる何かを五分も前から待ち続ける身にもなってほしいものだ。
しかし、心の準備も必要なわけで、気がつくとカウントダウンをしてしまっている。
終礼の鐘が鳴った。
ああ、終わった。
その余韻に浸ること、その間僅か数十秒。
「タカトーーーーーーー!」
廊下側から猛進してくる足音。これが毎時間タカトのいる教室まで響き渡る。
クラスメイトからは、「避難しとかないとこっちが怪我する」といわれるまでの激しさだ。
ドアを思い切り開けるや否や、タカトの席一直線にズカズカ歩いてくる人物が一名。
「お待たせ、タカト!」
「別に待ってないし、呼んでもない」
「毎回塩対応だな!でもそれがタカト!」
「あのさぁ・・・・・・せめて静かに歩いてきなよ。周りの迷惑にならないようにさ。毎時間、うちのクラスのヤツ、ああして避難してるんだからな」
ため息混じりに会話の通じないタカトの一つ上の兄ユキヤに毎回同じような注意をする。
隅に固まるクラスメイトは遠巻きに、頭が光り輝いている(金髪)兄のユキヤを不安そうに見ている。
それを見るタカトが申し訳無く思ってしまう。
見た目通りの無神経な男なのか、はたまた見た目とは裏腹のはっちゃけた男なのか、要は個人の受取方次第でギャップとか言うのだろうが、タカトは断然前者の意見が多いのだろうと思う。
タカトの前の席に我が物顔で座るユキヤ。
「俺だってタカトの言うことは分かってるさ。でもな、俺のかわいいかわいいタカトに一時間に一度しか会えないんだぞ、それも10分という僅かな間だけ!毎時間彦星の気持ちになってここまで猛ダッシュで走ってしまうんだ、そこは許してくれ」
「だから、俺がユキヤ兄に会いに行けば、問題も解決するんだけど」
「それはだめだ」
意思を固くして拒否を講じたユキヤを見て、既視感を覚えた。
普段はちゃらんぽらんなユキヤ、というか常にタカト一筋で周りが見えていない迷惑者のユキヤだが、ここまで頑としたところは初めてだった。
だが、このデジャブな感じはどこかで見たことのある光景だった。
「ま、まぁ、よくある度が過ぎたブラコンがそうしたいだけなんだ、俺の迎えがあるまではしっかりいい子で待ってろよ」
頑なな態度を見せたかと思えば、急に歯切れを悪くさせるユキヤに不信感を抱く。
冷静に省みてみれば、ユキヤという人物の分析を長年疎かにしていたことに気づく。
タカトの中でユキヤという人物がファイリングされていなかったからだ。
短いようで長い10分休みが終わり、またひとりの時間がやってくる。
それの繰り返し。
だが、六限を終えても、10分休みが来る。
そこでようやくユキヤという人物よりも、周りの環境に不信感を抱いた。
普通はここで掃除なりホームルームなりが行われ、そこから各自放課後という時間の流れではなかったか。
もしや、七限の補習は全員強制参加だったか。
急に記憶の有耶無耶さが脳裏を支配する。
目の前に当たり前のように座るユキヤに聞いてみた。
「なぁ、ここの学校って、何限まであったっけ」
――――。
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