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第16話 ノリオ

母が倒れたことを伝える度にまた思いが混み上がる もしも間に合わなかったら… ユウトはただ頷いてくれたが、きっと今日だけなんだろうな 車から出たらすぐに病院へ向かった 病室へ行ってみても、母の名前がなかった 看護婦さんに聞いたところ…危篤だと言われた 正直意味がわからなかった 看護婦さんの顔が暗い…もしかして… 私は宛もなく走った 母がいるであろう部屋についた マスクをつけた女性が眠っている やはり機械音で、いや酸素の音で寝息が聞こえない 部屋にはいるのにマスクが必要だといわれたが断った ユウトには申し訳ないが一世一代の嘘をついた きっと怒っただろうな…このときだけは許してほしい嘘だ ユウトが何て言ったか分からなかった、心音計が1音になってしまった 手が冷たくなっていく 「かぁさん!!かぁさん!!」 振り絞った声でユウトの声が聞こえなかった 何て言ったのか分かっていた 聞いておくべきだった大事な言葉を… きっとそうとう勇気を出してくれたのに 心を開いてくれたのに 兄さんと呼んでくれたのに きっともっとはやく行っておけば 私は喜べたのだろうか
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