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第2話

その後、婆に隠れて桃太郎に摩羅を吸わせる度に、爺の摩羅は力強さを取り戻していきました。日に日に角度を増し、刀身は硬く勃ち上がるようになり、桃太郎が満足するまで何度でも子種を吐き出します。 爺は、桃太郎は仏の子だから食べ物はいらないようだと婆に言っておりましたが、布団の中で朝から(ふんどし)を盛り上げるようになった爺の変化に、婆が気付かないはずはありません。爺を問い詰め、とうとう桃太郎の食事について白状させました。 爺も婆も知りませんでしたが、実は、桃太郎はその身に桃の精特有の神通力を備えていたのです。 桃の精は元来、生きとし生けるものの雄雌を問わず性欲を喚起し、その欲望と肉体を操って面白おかしく生きる存在でありました。しかし、桃の霊力を十分に取り込みきれずに生まれてしまった桃太郎の神通力は弱く、子を生むという強大な力をもった女にはほとんど作用せず、欲望に負けてあちらこちらをふらふらする男ばかりに有効でした。 しかも、摩羅をしゃぶって在りし日の元気を取り戻させるだけという、大層粗末な力でした。 爺は、泣き止ませるためとはいえ赤子の口に摩羅を含ませたことを怒られるかとびくついておりましたが、話を聞いて婆は大喜び。これぞ仏様の思し召しと、昼も夜もなく爺の摩羅に跨がり腰を振りました。 粗末な神通力でも、とうに(ねや)の営みがなくなっていた爺婆には重宝されました。桃太郎は交わる爺婆の横に寝かされ、爺の摩羅が力を失う度に、はよう勃てろとしゃぶらされます。 こうして成長に必要な量の子種は十分に得られましたが、老夫婦の交わりばかりを見て育った桃太郎は、すっかり男女の閨の秘密を知り尽くし、興味を失ってしまいました。 そんな生活が十有余年続き、桃太郎は子種だけを口にして、桃の精としては不完全ながらも青年の姿ほどに育ちました。 しかし、桃太郎が口にした子種は爺のものだけではありませんでした。 戸も窓も開け放して過ごす(ひな)のこと、夜を日に継いで交わる爺婆の声は村中の者が耳にしておりました。当然、村中の噂となります。精力の秘密を教えてくれろと、村中の年寄が酒を魚を獣肉を手に桃太郎の家に押し寄せました。 ここだけの話だが、と若返りの秘密を酒の肴にすれば、皆一様に驚き、そんな馬鹿な話があるものかと笑いました。 しかし、信じたい噂は広がるもの。 わしの摩羅も桃太郎に吸わせてくれと、家宝の刀だ絹の織物だと高価な品を持って、こっそりと桃太郎の家を訪れる者が後を絶たなくなりました。 目の前にした様々な宝への欲望に負けた桃太郎の爺婆は、宝と引き換えに桃太郎に客人の摩羅を吸わせました。 神通力の効果はてきめんで、一度吸えば萎びた摩羅が力を持ち、二度吸えば薄いながらも子種を吐き出せるようになります。 己が身で桃太郎の神通力を確かめた村の衆は、もっと吸うてくれもっとしゃぶってくれと、家中の宝を手に桃太郎の家に押し寄せました。 しかし、不完全な桃太郎の神通力では、吸った摩羅も時と共にまたその力を失ってしまいます。取り戻した精力が甘美であればあるほど、それを失う空しさは大きくなるものです。 村の衆は摩羅が力を失う度に、貢物を手に桃太郎の家を訪れるようになりました。 こうなっては桃太郎を育てる爺婆にとって、桃太郎は無限に富を生む打出の小槌です。不思議な力を欲しがる輩の(かどわ)かしにあわぬよう、外にも出してもらえません。 こうして桃太郎は村中の爺たちの子種をその口に受け、一歩も外に出ることなく青年の姿ほどに育ったのでありました。

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