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第3話

陽に当たらないまま育った桃太郎の肌は抜けるように白く、体に取り込み続けた子種を思わせるようにしっとりとしています。御仏(みほとけ)の遣いよと婆が毎日丁寧に(くしけず)った漆黒の髪は艶やかで、切れ長の目を縁取る濃い睫と共に、白い肌を更に際立たせていました。 そしてその体の中で唯一、毎日摩羅を抜き差しされた唇だけは充血して常にぼってりと赤く、まるで紅を差したように鮮やかでした。その唇を見ると、男なら誰でも摩羅を咥えさせてみたいと思わずにはおられません。当初神通力の効果を得るために訪れていた村の爺たちは、今ではその唇で摩羅を扱いてもらいたくて桃太郎の家を訪れるようになっておりました。 怒ったのは村の婆たちです。夫の摩羅が元気になった頃は、桃太郎をまことに御仏の遣いよとありがたがり、取り戻した交合の悦びに浸っておりましたが、夫たちがいつの間にか自分たちの女陰(ほと)よりも、美しく成長した桃太郎の唇を求めるようになっていたからです。 家の宝は出し尽くし、蓄えた米を差し出してでも、爺たちは桃太郎のあの卑猥な唇に摩羅を慰めてもらおうとします。 そうこうしている内にすっかり蓄えを無くし、冬越えを危ぶまれる家がいくつも出るようになりました。 一方、村中の宝を得た桃太郎の爺婆は大きなお屋敷を建て、贅沢な暮らしをしております。明日の米をも憂う爺婆達がお屋敷の前を通るたび、いつまでも若衆のような力強い爺の摩羅で婆が昼でも夜でも今際(いまわ)の声を上げているのが聞こえてくれば、憎しみは否応なく増していきます。 そして冬の訪れを予感させる木枯らしが吹いた夜、不満を募らせる村人達の内、特に暮らし向きの苦しい十数軒の家の爺達が銘々に(なた)や鎌を持ち、桃太郎の住む屋敷に押し寄せました。門を打ち壊し、扉を破って雪崩れ込んだ爺達に、裸で組んず解れつしていた桃太郎の爺婆は仰天します。凶器を手にし、うちの宝を返せ!桃太郎を寄こせ!と口々に怒鳴る爺達に桃太郎の爺婆はすっかり(おのの)いてしまい、平身低頭して裸のまま命乞いをしました。 「お待ちください!」 突然桃太郎が大声を出し、襲ってきた爺達と育ての爺婆の間に立ち塞がりました。 その場にいる誰もが驚いて腰を抜かしそうになります。なぜなら桃太郎はこれまで一度も言葉を発したことが無かったのですから。 育ての爺婆ですら桃太郎は言葉が話せないのだと思っておりました。それどころか、自分の意思があるとすら考えたことがなかったのです。 摩羅を(みなぎ)らせる摩訶不思議な力をもつ桃太郎は、御仏の思し召しによって遣わされた尊い者ではあるが、話せもせず意思ももたない木偶(でく)だと皆が思っておりました。 桃の中にいたころから目まぐるしく頭を働かせていた桃太郎でしたが、未発達な肉体が天然の枷となり、長らく話すことができませんでした。それでも徐々に成長し、今ではとうに話しもできれば気に入らない男の摩羅を噛み切ることもできるようになっておりましたが、上げ膳据え膳の生活では話す必要もなく、摩羅を吸うこともすっかりただの食事となっていたので、嫌がることもなかったのです。 それが今、育ての爺婆の危機を目の前にし、初めて自分の意思で動いたのでした。裸で震える爺婆を背に庇い、桃太郎は爺達に敢然と立ち向かいます。 「皆様のお怒りはごもっともです。でも、この方達は私にとっては大恩ある育ての父母。屋敷を建てるのに売ってしまった皆様の宝の代わりに、私が鬼ヶ島から多くの財宝を持ち帰りましょう。ですからどうか私が戻るまで、この方達に惨いことはなさらないでください」 凛とした瞳で頼もしい言葉を紡ぐ桃太郎に、集まった爺達は気圧され後ずさります。こんなしっかりした若者を、摩羅をしゃぶらせるだけの木偶として扱っていたことを思えば、ばつが悪くも思われます。爺達は皆が皆桃太郎の神通力の恩恵を受けておりましたので、桃太郎に強く出られる者などこの場にはおりませんでした。 顔を見合わせる爺達の様子に、これが勝負時と桃太郎は畳み掛けます。 「夜明けと共に旅立ちます。餞別(せんべつ)に皆様の子種を私に飲ませて下さいませ。さぁさ、物騒なものは置いて、(ふんどし)を外して下さい。夜明けまでもう幾刻もございませんよ」 桃太郎は微笑んで、ぼってりした唇を半開きにし、わずかに舌を覗かせました。爺達はたまらず、我先にと得物(えもの)を放り出し、褌を解くのももどかしく、膝をついた桃太郎を取り囲みます。 「とと様かか様、どうか私の旅路の支度を整えてくださいませ」 そう言って育ての爺婆を部屋から追い出すと、既に顔のいたる所に押し付けられていた萎えた摩羅を、片っ端から口に含んでいきました。少し口に含んでは出して次の摩羅へと繰り返す内、その場にいた十数人の爺達の摩羅は全て固くなり、桃太郎の髪といわず着物と言わず、あらゆるところに擦りつけ始めます。一つきりの口では追い付かず、両手両足も使って扱き、できるだけ平等にと考えますが、段々わけがわからなくなってきてしまいました。 その結果、一人につき一回ずつ子種を飲むつもりであったのが、夜が明ける頃には腹がぽったり突き出してしまうほどに多くの子種を飲んでおりました。それでも、痺れて閉じられなくなった口に向けて、まだ何度も爺達は挑みかかります。 桃太郎の育ての爺婆が遠慮がちに(ふすま)を開いた時には、桃太郎は全身を子種まみれにして放心しておりました。

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