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第5話

桃太郎が股間の違和感に目を覚ますと、太陽はすっかり頭の上にありました。暖かな陽気に、再び(まぶた)がとろりとしてきます。 しかし、股間の違和感が眠りに落ちるのを許しません。違和感というより、摩羅にぼんやりとした気持ちよさがありました。 面倒に思いながらも顔を上げると、袴の脇から犬の下半身が生えており、桃太郎は硬直してしまいます。 恐る恐る袴の腰紐を解き、そろりと前丈を持ち上げると、緩んだ(ふんどし)に顔を埋め、熱心に桃太郎の摩羅を舐めている痩せた犬がおりました。 外に出ることなく育った桃太郎は犬に触れたことがありませんでしたが、それ以上に摩羅はしゃぶる物であってしゃぶられる物ではないと思い込んでいたので、自分の摩羅がしゃぶられている光景は衝撃でした。 桃太郎は固まっておりましたが、眠りに落ちる前のことを思い出してなるほどと得心しました。犬は桃太郎の摩羅から出た桃の味の甘露に惹かれているのです。確かにあの甘露は自分で舐めても極上の味でしたので、飢えた野良犬にはごちそうでしょう。 驚きが過ぎさると、ぺろぺろと舐められる感触はくすぐったくも心地よく、自分の摩羅が固くなっていくのを感じます。このまま摩羅を舐められる快感に身を任せようかと思ったその時、嬉しげに振られる尾の下で、にょっきり突き出した赤黒い犬の摩羅が揺れているのが見えました。 唐突に蘇った空腹感に、桃太郎は戸惑いも忘れて犬を鷲掴み、ひっくり返して摩羅にしゃぶりつきました。驚いた犬は反撃もできず、されるがままにあうあうと情けない声を上げています。 細長い摩羅は桃太郎の好みではありませんでしたが、仰向けのままで腰をかくかくさせる犬の様子は素直でかわいらしく思われます。また、窄めた唇や舌や上顎をちゅぷちゅぷとものすごい速さで摩羅に擦られるのは、今までにない感覚でうっとりとしてきます。 蛇に喉奥を突かれた時の圧迫感がより好みでしたが、素早い動きで口に出し入れされるのも悪くなく、桃太郎は片手で固くなった己の摩羅を握り込みました。出してはいけないと思いながらも、軽く扱いただけで快美感は高まり、口の中も更に敏感になるのを感じます。そして快感が高まるほどに、自分の神通力が高まっていることをはっきりと感じられました。 桃太郎の脆い自制心があっさり快感に負けようとした時、犬が一息早く甲高い声できゅーんと鳴き、桃太郎の口の中にびゅびゅっと子種を出しました。量はあまり多くなく、さほど濃くもありませんでしたが、空腹の桃太郎は余すことなく飲み干そうと、唇と頬に力を込めて吸い出します。 犬は泡を吹いて痙攣しましたが、桃太郎が最後の一滴まで吸い出してようやく口を離すと我に返りました。そして腰が抜けたように腹を出したまま、尾をぶんぶんと振ってさも嬉しげに桃太郎に服従を誓いました。 一方高ぶりを削がれた桃太郎は、辛うじて理性を取り戻しました。よく見ると、犬は摩羅を中心として全体的に毛艶が良くなったように感じられます。 これまでは相手の摩羅を元気にする力しかもたなかった桃太郎でしたが、快感に目覚めたことで、どうやら神通力が増したようです。己の快感が高まれば高まるほど神通力が増し、しゃぶっている相手の体へ神通力を流し込めるようになっていました。 これで、蛇の傷が治った不思議にも得心がいきます。桃太郎が今まで感じたことのないすさまじい快感を得たため、命を危ぶまれるほどであった蛇の傷がすっかり治ったのです。 しかし、ひとたび桃太郎が自身の摩羅から甘露を吐き出せば、高まった神通力も霧散してしまい、桃太郎自身も眠ってしまうということのようでした。 他者の傷を治したり肉体を元気にできるというのは正に御仏の遣いと言うべき慈悲深い力でありましたが、そこは理想の摩羅を求める桃太郎。自分が快感を極めてしまえば、他人の摩羅を元気にする力も失われ、自分も眠ってしまうとなれば、そう簡単に快感を極めるわけにはいかぬぞと眉根を寄せてしまいます。 良い摩羅を心行くまで味わおうと思えば、自分の快感を極める寸前で長引かせ、相手の摩羅と肉体の限界を引き出すことが肝要だということです。しかし、喉奥まで犯されながら極める快感を一度知ってしまった体は、そうそう我慢ができそうにありません。ついさっきも、犬の摩羅を咥えながら自ら手遊(てすさ)びをしてしまいそうになった桃太郎です。良い摩羅に出会った時に、自分の摩羅弄りを我慢できそうに思われませんでした。 鬼ヶ島への旅は他にも色々考えるべきことがあるでしょうに、桃太郎の小さな頭の中はこうして新たな悩みでいっぱいになってしまいました。

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