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第20話

さて、死にそうな空腹はなんとか治まったものの、そうは言っても三日ぶりの食事ですので量が全く足りません。 「そなたらがどうしても教えとやらを守りたいというのなら、私もそなたらの摩羅は諦めてこやつらの子種で我慢しようかの」と言いつつ鬼たちに流し目を送れば、鬼たちはいつの間にか跪いて両手の指を組み合わせ、涙を流さんばかりの感動の面持ちをしておりました。 その様子に桃太郎はぎょっとしましたが、鬼たちにしてみれば、突然現れた美青年が自分たちの拘っていた教えを足蹴にした上、あろうことか下等な獣たちの摩羅を口で慰め、恍惚とした表情で子種を飲み、あまつさえ獣たちに礼まで言ったのです。 獣たちに礼を述べた桃太郎の表情は慈愛に満ちて美しく、「シャクハチ」をされた猿も犬も、嬉しげに桃太郎に纏わりついており、かくも平和な光景です。それに引き替え、着るも食べるも苦労する苦しい生活の上、更に禁欲の教えでまでも縛られていた自分たちは、あまりにも惨めで空しく思われてきます。鬼たちにとって桃太郎との出会いは、まさに天変地異に遇って新しい教えを説かれたようなものでした。 鬼たちはアリガトウアリガトウと涙を流さんばかりに桃太郎に感謝を示し、最早一切の羞恥を見せず、一斉に自分たちの腰布を剥ぎ取りました。桃太郎は突如目の前に現れた三本の猛り立った摩羅に目が点になります。それは桃太郎にとっては、もはや桃源郷の入り口に立ったような光景でした。 三本の摩羅は形も大きさも三者三様でしたが、それぞれが雄々しく天を突き、鬼自身と同様、感動に震えるように透明な滴をこぼしておりました。桃太郎は一本一本摩羅を(つぶさ)に吟味していきます。 黄鬼の摩羅も赤鬼の摩羅も、桃太郎が知る人間の摩羅とは異なり茅色めいておりましたが、青鬼の摩羅は黒ずんでおり、見慣れた色に近いせいか最も卑猥に見えます。大きさに関わらず、摩羅といって思い浮かべるものに近い見た目の方がより卑猥に感じるとは、桃太郎自身も知りませんでした。青鬼があどけなさを残す顔立ちの下に黒々とした脈打つ摩羅をそそり立たせている様子は、少々怪異めいてすらおり、手で舌で触れて確かめてみたくなります。寸法こそ他の二匹に及ばないものの、それでも常人よりははるかに大きく、或いはこれこそが桃太郎の望んだ口に入り切る(きわ)の太さ長さかもしれません。 しかも、やや極端な反り返りを見せており、喉まで飲み込めれば間違いなく喉奥の上をごりごりと擦って苦しみを与えてくれるはずです。その恍惚とした苦しさを想像しただけで涎が口いっぱいに溜まり、えずきすらこみ上げてきます。

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