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Aquarius(12)*
貴方の弟は冷たい海の底に沈んでしまったけれど、僕は今、貴方の手で殺されて生まれ変わるんだ。 貴方の弟として。
ガニュメーデースの水瓶から零れているのは、涙なんかじゃない。貴方と生きる為の永遠の愛の酒。
意識が薄れそうになる狭間で、愛しい人の漆黒の瞳の中に僕の顔が映し出されているのが見えた。
すると首を締めていた教授の指先から力が抜けていくのと同時に、身体の奥に愛しい人の吐き出した熱が広がって僕の中を満たしていく。
とても……幸せだと思った。
ほんの一瞬なのかもしれないけれど、僕は僕として愛してもらえたのかもしれない。それなら……それだけで僕は幸せだと思える。
「はぁ、はぁ……はぁ……っ」
酸素を取り込みながら見上げると、正気を取り戻した教授が心配そうな眼差しで僕を見つめていた。
僕は荒い息を吐きながら、そっと教授の頬に掌を当てた。
ああ……そんな顔をしないで。僕には分かるから。――愛するものに心が囚われて、そこから離れることは簡単に出来ない、教授のその気持ち。
「心配しないで、大丈夫だから」
宥めるように触れるだけのキスをして、愛の誓いを口にする。
「僕は、もう二度と離れたりしないと誓うよ……」
永遠に。
貴方の心を癒すことが出来るのなら、僕は僕でなくてもいい。
さっき見せてくれた、ほんの一瞬の愛だけで、それだけで僕は充分幸せだった……だから……。
「愛してます、兄さん」
これから僕は、雨宮 潤として貴方と一緒に生きていく。
例えこの先に絶望の朝が訪れても、貴方の傍に居られるのならそれでいい。
「……みさ……き」
――僕は潤だよ。
謝罪の言葉を口にしそうな教授の唇をキスで塞いで、甘えるように彼の首に腕を絡めると、教授の手が僕の背中を抱きしめてくれた。
広縁の向こう側の庭に目を遣れば、さっきまでの土砂降りの雨が上がっていた。
西の空から雲が切れ、晴れ間が覗いてる。
鬱陶しい季節が終わりを告げ、新しい季節が始まろうとしていた。
Aquarius END / + to be continued → →
2017.11.20
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