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Aquarius(11)*

  達した後の脱力感も抜けないうちに教授の唇が後孔に触れ、僕の放った粘液を纏った舌が水音を立てながら入り口を湿らせた。 「愛してるよ……」  耳元に囁かれ、後孔に熱い切っ先が宛てがわれる。 「んッ……あ、ぁッ」  熱く硬い肉杭が埋め込まれ、ゆっくりと僕の中が教授の形に押し広げられていく。  まだ蕩けきらない肉襞を硬い先端で擦られると、途端にそこは敏感に熱を持ち、教授を奥へと誘うように蠢き絡み付いていくのを感じる。  すごく熱くて、少し苦しくて。    そして愛する人と体内で繋がることの出来た嬉しさに胸が震える。  たとえ教授の瞳が僕じゃない人を映していたとしても。 「……潤……」  灼熱の杭を最奥まで呑み込んだところで、教授は唇から熱の籠った吐息と共に誰かの名前を零した。  僕の知らない人の名前。  教授の弟さんの名前。  僕にそっくりな、あの少年の名前。  ああ……そうなんですね。  『潤』  それが、教授が心を囚われて離れることのできない、愛する人の名前なんですね。 「あ……は、ぁ、あ」  両手で腰を固定され、教授の灼熱の楔がゆっくりと、ぎりぎりまで引き抜かれていく。その感触に喪失感のようなものを覚え、引き留めるような淫らな声が出てしまう。 「潤……」  そう呼ばれた次の瞬間、勢いよく再び最奥まで貫かれ、そしてまた引き抜かれる。 「ん……あああっ……んっ」  さらりと落ちた長めの前髪の隙間から鋭い眼差しで、潤という人を見つめながら教授は抽送を繰り返す。僕はその背中に、しがみつくように腕を回した。  敏感になった肉襞を擦り、最奥へ突き入れられる度に身体が戦慄き、怖いくらいの快感の波に囚われていく。 「あぁっ……あ……んっ」  教授の律動に合わせ、僕は堪えきれない嬌声をあげる。 「潤……」  何度も何度も、彼の口から零れる愛する人の名前。 「愛してる。もう俺から離れないと誓ってくれ」  動きながら僕じゃない他の人を呼び、教授は噛み付くように唇を重ねる。 「ん、ふっ……」  穿たれた身体の中が熱くて、頭の中も熱に浮かされたように朦朧としてるけど、教授の声ははっきりと届いていた。 (僕は……、僕なら先生の傍から、離れたりしない)  唇を塞がれて言葉が紡げなくて、心の中で必死に伝えていると、不意に教授が僕の首に指を絡めた。 「もしまた俺から逃げたら、その時は……」  ――今度こそ、お前と一緒に俺も……。  律動を早めながら、指先に力が入って喉に食い込んでくる。  暗い漆黒の瞳が潤んでいるように見えた。 「――ッん――ん」  息が詰まって、必死に出した声は言葉にならない。 だけど僕の心を貴方に伝えたい。 「――ッ、く、は、にげない……っ」   ――ずっと一緒に居させて……弟さんの代わりでいいから。

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