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エピローグ
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「またこうして2人で来れて嬉しいです。」
「別に……いつだって来れるし、そんな……大袈裟だろ?」
「そんなことないですよ。小太郎さんがアメリカに行かず僕を選んでくれたからまた来れたんです。」
「まぁ、そうだけど。」
「あの日海を眺めながら、もしあなたと両思いになれる日が来た時はまた一緒に来たいと思ってましたけど、さほど期待はしてなかったんです。」
「…………なんだよそれ。期待はしてなかったんだ」
「だってあの時、小太郎さんは桐谷先輩のことまだ好きだったじゃないですか。」
「…………どうだったろな。」
色々あって恋人同士になった数日後、俺達の関係がまだ曖昧な関係だった頃に来た海へ再び出掛けた。
今思い返しても、あの時洵也をまだ好きだったかと問われると正直分からない。
じゃあ、星川のことを好きだったかと問われたらそれも分からない。
けど、俺だって俺なりに色々考えてはいた。
はっきりしないなりにも考えてはいたんだよ。
「………けど、俺も色々葛藤はしてたんだよ、多分。」
「それは僕のことも少しは……」
「…………さあな。」
「………またはぐらかす。」
「俺だって立場とか一応考えたりするし、その辺は察しろよ。」
「わかりましたよ。じゃあ、今は?」
「は?」
「どんな気持ちで眺めてますか?……海」
そう問われ、そっと右手を繋がれた。
「………………多分、おまえと同じこと考えてる。」
あの時は、お互い複雑な心境でこの海を眺めていたけど、今はそんなことはない。
「同じこと?」
「えっと────おまえのこと……すげー好きだし、すげー幸せ……とかじゃねーの?」
「小太郎さんて、時々すごいデレを投下しますよね。」
「はぁ?何わけわかんないこと言ってんだよ。で、どうなんだよ」
「だいたい当たってますけど────」
これも付け加えてくださいと耳元に顔を寄せきた。
そして、耳元で熱く囁かれたのは────
「あなたのことすげー好きだし、すげー幸せ……
それに、愛してるよ……小太郎────」
────そんな、年下とは思えないほどの妖艶な声色で想いを告げられた……
好きになってしまったのがただ生徒だっただけ、
好きになってしまったのがただ教師だっただけ、
……ただそれだけのことだ。
二度と同じ繰り返しはしないと誓ったはずなのにまた禁断へと手を染めた俺は救いようのない馬鹿だけど、二度と後悔もしたくもない。
それに、またこうして星川を好きになったことは運命なんだと思う。
「まったく……タメ口使ってんじゃねーよ。」
「はじめに言ったじゃないですか、僕のさじ加減で決めますって。」
「あーそーかよ。」
10個以上も年下の恋人に翻弄される俺の人生……まぁ、それも悪くはない。
そう苦笑しながら繋がれた手を強く握り返した────
END
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最後までお読みいただきありがとうございました。
アトリエブログ(あとがき)は明日更新します。
結月 みゆ
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