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苦い過去 13
「ゆうちゃん傘は?」
「ない。別にすぐうちだし平気だ。」
「もう…二人とも。いつ降っ…ほら、降ってきちゃったじゃん。」
星川がさりげなく俺に視線を向けたが、すぐにその視線は俺の先にある窓へとそらされた。
「えーマジかよ。ほっしー駅まで入れてって?どうせ駅までは一緒だしいいだろ?」
「え?!あの……」
「渚はオレんち来るんだからオレと帰るんだよ。」
「えー昨日も行ったじゃん。」
「うるせー。さっさと帰るぞっ。ダイも帰るぞっ?」
「あ……うん。」
星川を知れば知るほど思うことがある。
それは、今みたいに同年代と一緒にいてもこいつはどこか大人びている。
落ち着いていて、決して波風立てるような性格ではないように思う。
でも、俺の前じゃ…そうとも限らないと言うか…なんと言うか…オスの要素が強い気がする。
そんなどうでもいいことを考えながら、窓の外へ視線を向けたままでいると、三人がバタバタと出ていく音が背後に聞こえてきた。
たくっ……先生にあいさつもなしで帰るのかよ。
ため息を吐きたくなるのを抑え、なんとなくまだ帰る気にならず窓を少しだけ開けると胸ポケットから取り出した煙草に火を点けた。
あ、俺も傘持ってねーや。
朝、バタバタしてて俺も傘を持ってきていないことに今気付いて、今度こそデカいため息を吐いてしまった。
……たくっ……最悪じゃん。
もう、濡れて帰るしかねーな。
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