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儚い感情 24
白衣のポケットに手を突っ込みライターを探す。
焦るつもりはないのにそれを出そうとした時、手の内からそれが滑り落ちた。
…なんなんだよ、まったく。
自覚のない焦りが俺をまたイラつかす。
ため息を吐きながら屈むと…ドア外の視界の端に何かが揺れた気がした。
「どうしたんだよ?」
「いや、なんでもない。」
気のせいか。
ライターを拾い上げなんとか煙草に火を付けると…全てを吐き出すようにゆっくりと息を吐き出す。
そして少しだけ落ち着いた俺は、今日初めてまともに洵也の顔を見た。
まったく…なんて顔してんだよ。
「おまえ…いつまで此処にいるんだ。」
「小太郎が話聞いてくれるまで。」
今にも泣きそうな…だけど鋭い眼差しで俺をじっと見つめる洵也。
だから嫌なんだよ。
昔から変わらない…その眼差し。
その眼差しに俺はいつも負けてしまう。
久しぶりだって結局は一緒。
また弱い自分が、割りきれない感情を噛み砕くように最終的には頷いてしまう────
「分かったよ、話せ。」
諦めにも似たそんな言葉と共に……
大人とは矛盾で出来てる
それを今、身をもって感じている俺は……
救いようのない馬鹿だ。
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