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淡いキス 3
目の前が暗くなり、すぐ唇に感じる温かさ。
そして、
……言い知れぬ、
この胸の痛み。
伝わる想いが薄く開けた口の中へと流れてくるようで、短く息を吐く。
「……んんッ……あッ」
「────せん……せッ……」
そして、“先生”と呼ぶその声に、またどうしたらいいのかわからなくなる。
だけど、
俺がしてやれることと言ったら……
「……ッ……ほし……かわッ……やめろッ……」
正しい道へと導くことだけ。
同じ間違えはしてはいけない。
いくら俺がいい加減な性格だからといって、このまま流されてはいけないんだよ。
「……ッ……」
言葉にならない想い
言葉にしてはいけない想い
……きっと、そういうことなんだよ。
軽く星川の肩を押し返しながら心の中で呟いた。
「……すいません」
そんな俺の気持ちを察したのか、そう謝罪の言葉を呟くと……名残惜しげにもう一度唇を吸われ身体は離された。
「……昨日と今日と、楽しかったです。ありがとう……ございました。」
そして星川は、それだけ言うと雨の中へと消えていった。
一連の行動があっという間で、気付いた時にはひとりぼっちになっていて……
「……はぁ」
無意識に深いため息を吐いていて、
そんなため息で誤魔化しながら指先の腹で触れた唇は……
もう、
一瞬で冷たくなっていた────
*
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