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凪沙 第4話

   「なあ、何がどうなってんの?」  校舎裏から、そっと抜けながら修斗が聞いてきた。そう言われても自分自身がどうなっているのかわかならい。  「わかんない……、でも修斗に避けられてんのが嫌みたい」  「避けてって……誰が?」  急に立ち止まった修斗は驚いた顔をしている。  だってそうだった、修斗は誘うたびに言い訳けを考えてそして断ってきた。一度や二度なら偶然かなと思う。けれど、何度も繰り返されるうちに傷ついてしまうんだ。  「避けられてた、それだけは間違いない」  「つぁ、もう、お前の勝手な妄想の世界で俺がお前に意固地になってたんだな。よし、それは理解した。俺なりに考えていたのに、どうしてこうなるかな」  違う、明らかに避けてたでしょう。嫌われたら、死んでしまうのに。  「だって、苦しくて」  「そこ、別にお前に無理させたいわけじゃないんだ。俺が苦しむと考えたら、そうならないようにと、お前はいつも無理するだろう。俺に合わせようとするだろう、それが嫌なんだ。別にいなくなるわけじゃないから」  「どうしたらいい?」  「それは、こっちの台詞だっていうの」  「だって、修斗は僕の事がもう好きじゃないって」  「違うって、ああもう。たとえお前が嫌だと言っても一生離れるつもりないんだよ。ただ、お前に拒絶されないように時間と距離をはかって……もういいや」  「……」    「もう、何でもいいや。で?お前は何で悩んでんの?」  「修斗がいない明日が考えられない。修斗の一番じゃなくなるなんて嫌だ。誰にもとられたくないんだ」  「あ……あ、そう」  「修斗?何で急に赤くなるの?」  「え?お前がそれを言うのか?」  修斗は笑いながら、そっと頬をつたう涙をすくってくれた。  「なあ、凪沙?お前は俺の事が好きなんだよな」  「え?そうかな?……うん、そうかも」  「じゃあさ、俺の気持ちと同じじゃねえの?」  「修斗の?修斗は苦しいくないでしょう?」  「もう、それくらいにしてくれないかな。恥ずかしくて顔から火が出そうだ」  修斗が笑って、そこにいてくれてそれだけで十分だと思った。泣きたいような気持はいつの間にか笑顔で上書きされていた。  「もう、この時間制服ででかけてもばれないとこないかな。サボりついでに出かけようか?」  「えっ?出かけるって?無理でしょう、それ叱られるよ」  「いや、お前既に今日はズル休みだからな。今更遅いって」  さて、どこがいいかなと笑いながら言う修斗を見て涙が出そうになる。あれ?何で今まで苦しかったんだっけ?そんなことさえ分からなくなった。  「修斗、絶対に離さないでね」  「お前がそれを言う?今までどれくらい待ったと思ってるんだよ。離してやらないから覚悟しとけよ」  「笑うのも泣くのも修斗と一緒がいい」  「俺は気持ちいいことも凪沙と一緒が良いな」  そう言ってにっと笑った修斗の笑顔は小学生の時にカブトムシをもってきてくれたあの修斗の笑顔と同じだった。  

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