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第222話 クリスマスの街

電車に乗って移動した。 クリスマス仕様の街はすっかり浮かれた様子で、足取りの軽い人々の明るい笑顔が飛び交っている。 勿論、人の多い街中、そう言う人ばかりではないけれど。 混雑する道を、人の間を縫うように急ぎ足のサラリーマン。 機嫌の悪そうなおじさん。 ケンカ中のカップル。 恋人たちを冷やかしながら歩く集団。 幸せそうな2人にわざとぶつかっていくような人もいるからと、斗織は俺の手を握ったままなるべく自分に寄せるように歩いてくれていた。 それはオーバーな杞憂ではなくて、さっきも前に見えるカップルの真ん中を勢いよく割って歩く人が居て、彼女の方が突き飛ばされて転びそうになっていた。 お姉ちゃんにも、『クリスマスとバレンタインの街には恋愛シネシネ団がいるから気を付けてね』って言われたっけ。 ほんとに居たんだ。シネシネ団。 駅ビルに入って、目に付くお店を見て回る。 明日のクリスマスパーティーの交換用のプレゼントを選びに来たんだ。 斗織に「一緒に買いに行こう」って誘ったら、もう用意したって言われちゃって。 だから今日は、俺の分だけ探しに来た。 「まだ用意してなかったのか?トロくせェな」なんて言いながらも、なんだかんだ付き合ってくれるんだから、斗織は優しい。 口は悪いけど。 「どうしよっかなぁ…。ねえ、斗織は何にしたの?」 余り高いものだと貰った相手も気を使いますから、1500円程度のものとしましょう、とは級長の言葉。 「布に綿詰まったやつ」 「布に綿……?」 なんだろう、…クッションかな? 普通に答えればいいのに。 「教えたらつまんねェだろ」 お前に当たるかもしんないし、と斗織。 斗織のプレゼントが当たるなんて、とおるくん貰って、時計貰って、これ以上そんな贅沢があるわけないじゃん。 ファッション系の物は趣味もあるし…… フロアを一周して、下の階に下りようとエスカレーターに足を踏み入れた瞬間、ポケットの中でスマホがブルブルと震えた。 「ん、メールか?」 斗織もおんなじタイミングで自分のポケットに手を掛ける。 「俺も来てるから、Limeかも」 俺と斗織、級長、リューガくん、中山で作ったLimeグループ。 そこにメッセージを打てば皆に一斉送信されるようになってる。 エスカレーターを降りて、脇に寄る。 発信は、中山からだった。

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