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第4話 友達って
入口付近で羽崎と別れて、自分の席へ戻る。
一番前の、6列並んだ真ん中の左側。教卓の真ん前が俺の席だ。
羽崎は……、あ!窓側の一番後ろ。特等席だ。
「紫藤、何時もお前、昼何処で食ってんの?」
席に着いた瞬間、隣の中山に声を掛けられた。
中山……ゆうすけ、だったかな。
いつも名字でしか呼ばないから、下の名前は曖昧。
ん〜。それにしても、お昼食べてる場所、かぁ……
いつもこっそり、誰にも気付かれない場所で食べてるから…。あんまり人に言いたくないんだよなぁ。
どうしよう…、って首を傾げながら考えて。
でも良いはぐらかし方なんて思い付かないから、返す言葉はコレしかない。
「んー、ナイショ」
「ナイショって!…んじゃあさ、今度一緒に食おうぜ」
「うん、いいよ。今度ね」
「ぜってーだかんな」
「はいはい」
時々こうして誘ってくれる人がいるけど、毎回適当に交わしてる。
遊びたくない……訳じゃないんだけど。
ほら、結局友達ってさ、「ずっと友達でいような」なんて言ったって、子供同士の付き合いじゃ、その場限りっていうか。
こっちばっかりそのつもりでも、やっぱり傍にいてすぐ遊べるやつのが大切って訳で。
「なあ、紫藤。今日の放課後空いてる?」
なんでか中山は必死な様子で、手まで握ってくる。
なにか頼みたいことでもあんのかなぁ?
友達に頼めばいいのにな。
「んん〜?放課後〜?」
最近、中山よく話しかけてくるよなぁ。席替えで隣になってからだっけ。
有難いけど、断る口実探すのがどうにも面倒…
「えーと、ねぇ…放課後、今日はぁ…」
親に早く帰って来なさいって言われてるってのは先週使って、前に図書館行くって言ったらついて来られそうになったし…
てか、試験近いんだから、放課後遊んでないで、早く帰って勉強しろよなぁ。
つい恨めしそうな目を向けてしまうと、
「唇、ムーって尖ってんぞ」
「えっ…?」
振り向いた先で、唇をパクッと摘まれた。
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