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第66話 番外編 最終話

「いや。七年後なんてずっと先やん。そのころおれらはどうなってるのかなと思って」 「そやなぁ。どうなっとるやろな」 「そのころには三十歳やよ」 「信じられんわ」  的野が笑ったまま少し真面目な口調になった。 「……そんときも、一緒におられたらいいな」  優しげな瞳でこちらを見つめてくる。 「おるにきまってるやん」  当たり前だと返せば、的野が嬉しそうに笑った。 「じゃあ、毎年、一緒に収穫できるな」 「うん。これから毎年、秋になったら一緒に食べよう」  雪史も皿の上におかれた柿の紐をつまんで揺らす。的野の吊している柿にこつんとぶつけると、ふたつの柿がくるくる回りながら紐が絡まっていった。 「おれ、的野とこうやってずっとすごしていきたい」  紐が目一杯よじれると、今度は逆回転してほどけていく。 「俺もや」  的野が静かに返した。そうして、あいた手を雪史の手に重ねてくる。 「ユキとふたりで、こんな風に楽しいこと見つけたり、小さなことで驚いたりして、ずっとずっとここで暮らしていきたい」  ギュッと握られた手に、雪史もうなずいた。 「うん」  この先も、何があっても。  生まれ育ったこの町で。  ふたり一緒に、生きていきたい。  的野が微笑みながら、身をよせてくる。  甘い果実が触れあうように、互いに優しいキスをした。     おわり

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